脳ドック

脳ドックの受診頻度はどれくらい?推奨年齢や選び方も

三島総合病院 健康管理センター長 青柳 昌樹先生

この記事の監修ドクター

三島総合病院 健康管理センター長
青柳 昌樹

【略歴】
東京医科歯科大学卒
医学博士

【資格】
日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医

一度の発症で後遺症が残るだけでなく、命に関わることもある脳血管疾患(脳卒中)は、前触れなく突然引き起こることが多い疾患です。通常の健康診断では脳の検査を行うことはほぼないため、検査は個人で受診しなくてはなりません。

脳卒中のリスクを調べるには「脳ドック」を受診するのが最適ですが、何歳から受診したらいいのか、受診頻度はどのくらいなのか、わからないことも多いのではないでしょうか。今回は、そんな脳ドック受診に適した年齢や頻度について解説します。

目次
  1. 脳ドックを受けるべき年齢、受診が推奨される人
  2. 受診頻度の目安は2~3年に1度
  3. 脳ドック受診施設の選び方
  4. 脳ドックで異常が見つかったらどうなる?
  5. まとめ | 早い年代からの脳ドック受診で脳卒中発症のリスクは減らせる

脳ドックを受けるべき年齢、受診が推奨される人

脳ドック検査結果イメージ
脳ドックは、脳の血管の状態をチェックし、脳血管疾患(脳卒中)のリスクを調べる検査コースの総称です。実施する主な検査は、頭部MRI検査と頭部MRA検査が中心です。両方の検査を行うことによって、脳梗塞のリスクならびにクモ膜下出血のリスクを調べることができます。

さらに詳しく検査を行う場合は頸動脈超音波(エコー)検査や頸部MRA検査などを実施し、脳卒中のリスクを引き上げる動脈硬化の状態を調べます。

脳ドック受診の推奨年齢は40歳以上

脳卒中は高齢者の病気と思われがちですが、20歳~64歳までの就労世代で発症することも多く、特に40歳前後はそのリスクが高まります。

現代では医療が進展して脳卒中の死亡率はひと昔前よりも低くなったと言われますが、それでも、日本人の死亡原因第3位とその危険性はまだ高く、注意が必要な疾患です。

一度脳卒中を発症すると、命をとりとめたとしても何らかの後遺症が残る恐れがあり、退院後に介助が必要となるケースもあります。働き盛りの年齢で発症すれば、家庭や仕事などその後の人生だけなく、家族にも大きな影響が及びます。脳卒中リスクを早期発見するためには、発症の危険性が高まる40歳以上で脳ドックの受診が推奨されます。

※厚生労働省/第8表 死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合

脳ドックを受けるべき理由

毎年必ず会社の健康診断を受けていても、通常の健診では脳の血管を専門的に検査する項目はありません。また、脳卒中を引き起こす要因となる動脈硬化は「生活習慣病」とも大きく関連するため、近年では「生活習慣病予防健診」を実施する市区町村も多くなってきました。

しかし「生活習慣病予防健診」では、動脈硬化を早期発見するための検査項目は設けられているものの、直接的に脳血管疾患のリスクをチェックする項目はないため、脳の血管の状態を調べるためには脳ドックなど専門の検査を受診しなくてはなりません

推奨年齢以外で脳ドックを受けた方が良い人

発症リスクの高まる40歳以上の方はもちろんですが、以下のような方も脳ドックの受診をおすすめします。

  • 就労世代(特に40歳以上の方)でこれまで一度も頭部MRI検査を受けたことがない方
  • 生活習慣病(糖尿病・高血圧・高脂血症など)を患っている方
  • 家族や親族の中で脳血管疾患(クモ膜下出血・脳出血・脳梗塞など)の発症歴がある方
  • 心筋梗塞か狭心症を患っている、もしくは発症歴がある方
  • 喫煙歴が長い、飲酒量が多い方
  • 日常的に頭痛が続くなど気になる症状がある方

受診頻度の目安は2~3年に1度

では、脳ドックはどのくらいの頻度で受診すれば良いのでしょうか。受診頻度の目安とその理由について解説します。

基本的に2~3年おきの受診を推奨

脳ドックを受診した後は、特に異常が発見されなければ基本的に2~3年に1度の受診で問題ありません。ただし医師から特別な指示がある場合は、1~2年おきと間隔が短くなることがあります。

また、症状がなく生活に支障もない程度の脳梗塞(ラクナ梗塞)など、軽微な異常が発見されたときも、経過観察を行うために受診間隔が短くなる場合があります。

結果に異常がなくても受診頻度は年齢で判断

年齢が20~30代と若ければ若いほど、脳血管疾患のリスクは低減します。また、その後も生活習慣病にかからず喫煙・飲酒量などに注意して、特に気になる症状がなければ、次回の脳ドック受診は2~3年後で問題ないでしょう。40代の方も検査結果、異常や医師からの特別な指示がなく、その他の健康状態が安定していれば、脳ドックの受診は2~3年後でも問題ありません。

しかし、40代以降は基本的に脳卒中の発症リスクが高まる年代です。40代後半に達した頃からは、意識して受診間隔を短くしていくことが必要となります。

脳ドック受診施設の選び方

脳ドック受診施設の選び方
脳ドックを受診する際はどのようなポイントに注意して施設を選択すべきでしょうか。受診する医療機関の選び方について解説します。

重視するべき3つのポイント

脳の血管の状態を経過観察できるよう、定期検診は継続して同じ医療機関を受診することをおすすめします。

・医療機関の場所(距離や立地)

検査結果によっては、そのまま診療科へ移行して治療が始まるケースや、別日に精密検査を行う場合もあります。異常が発見されなかったときも、今後定期的に受診することを考えれば、自宅や職場の近くなど通いやすい立地にある医療機関を選ぶことが大切です。

・MRI設備環境

脳ドックでは多くがMRI装置を使用します。一般的なMRIでの頭部検査は、狭い筒状(トンネル型)の機器の中へ横になって入り検査を行うため、閉所恐怖症の方は受診できない恐れがあります。しかし、閉所・狭所に不安がある方でも受診できるオープン型のMRI装置を導入している医療機関もあり、どのようなMRI装置を導入しているかも施設を選ぶ際のポイントとなります。

・受診のしやすさ

慣れない検査では緊張することもあるので、施設の雰囲気やスタッフの対応も重視すべきポイントのひとつです。受診者が女性の方であれば、医療機関のスタッフや医師に同性がいると緊張がやわらぐでしょう。また、検査前の説明だけでなく検査後のフォローをしっかり行ってくれるかどうかも重視したいところです。平日が忙しい方は、休日も受付してくれる医療機関であれば受診のしやすさが増します。

費用感は検査内容によって変わる

検査費用は、医療機関と受診する脳ドックのコース内容によって異なります。頭部MRI検査のみのコースや、頸動脈エコー検査も実施して多角的に脳の疾患リスクをチェックする場合など、コースによって金額に差が出ます。一般的には、およそ2~5万円の間で設定されていることが多いです。

脳ドックを実施している医療機関を探す際は、場所や検査コースを絞り込んで検索ができるWebの予約サイトを活用すると便利です。

▼関連記事を読む

脳ドックの費用はコースや検査項目で変わる!脳卒中などに備えた検査の選び方

脳ドックで異常が見つかったらどうなる?

脳ドックを受診して異常が発見された場合でも、ラクナ梗塞と呼ばれる脳梗塞であれば無症状で緊急性は低いため経過観察を行います。その場合は、脳ドックの受診頻度も1~2年に1度で良いでしょう。また、脳ドックでは脳腫瘍が発見されることも多くありますが、大半は良性腫瘍で、同じように経過観察となるケースがほとんどです。

注意しなくてはいけないのは「未破裂脳動脈瘤」と呼ばれる、くも膜下出血の原因となる疾患リスクです。脳ドックで未破裂脳動脈瘤が発見された場合には、その大きさや動脈瘤のある場所に合わせて、今後の治療や手術方針を医師と決定していく必要があります。

動脈瘤の状態を調べる検査には、3DCTA検査というX線を用いて、脳や心臓を含む全身の血管を立体的に映し出す方法があります。経過観察を行いながら、必要に応じて精密検査を実施し、手術を行う流れとなるでしょう。

まとめ | 早い年代からの脳ドック受診で脳卒中発症のリスクは減らせる

年齢が早いうちから定期的な脳ドックの受診を
脳卒中は40代前後で発症リスクが高まりますが、年齢が早いうちから定期的な検診を受けておくことで、脳の血管の状態や今抱えているリスクを把握しておくことができます。大きな病気へと進展する前に対処しやすくなるので、まずは一度脳ドックを受診してみることをおすすめします。