がん検診

便潜血検査で陽性(+)大腸がんは40代から増加?結果の見方

桜が岡内科クリニック院長 金尾浩幸先生

この記事の監修ドクター

桜が岡内科クリニック 院長
金尾 浩幸

【略歴】
2000年 徳島大学医学部 卒業
【資格】
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医

近年は食生活の変化により、年齢に関係なく大腸がんの発症リスクが高まっています。そのリスクを発見するための検査が、一般健診や人間ドックでも実施される便潜血検査です。便に血液が潜んでいるかを調べる検査として国が推奨している対策型検診で、スティックによる採便で簡単に受けられるのが特徴です。

今回は便潜血検査の検査内容や結果の見方、検査後の対応まで詳しく解説します。
大腸がんの疾患リスクが高まる40歳以上の方や、食生活が乱れていると自覚する方は、受診を検討するきっかけにしてください。

目次
  1. 大腸がんの発症リスクは40歳以上で増加
  2. 便潜血検査でがんのリスク診断が可能
  3. 便潜血検査のメリットとデメリット
  4. 便潜血検査にかかる費用
  5. 採取時の注意事項と結果の見方
  6. 精密検査は大腸内視鏡で
  7. まとめ:大腸がん検診は便潜血検査と内視鏡検査の併用で

大腸がんの発症リスクは40歳以上で増加

大腸がんは歳を重ねるにつれてなりやすいがんといえますが、食習慣の変化に伴って、若い人でも大腸がんを発症してしまうケースも。大腸がんは男女ともに罹患数・死亡数の順位が高く、40歳以上になると発症リスクが増加する傾向にあります。2020年7月に公開された「最新がん統計」によれば、2018年の女性のがん死亡数は大腸がんがもっとも多いという結果が出ています。※1

大腸がんは歳を重ねるにつれてなりやすいがんといえますが、現代では食習慣の変化に伴って、若い人でも大腸がんを発症してしまうケースもあります※2。過度の飲酒や動物性脂肪の多い食事がその要因と言われています。大腸がんのリスクが高まっていく40歳以上の方、そして食生活を含む生活習慣の乱れを実感している方は、年に一度は大腸がん検査を受診し、定期的に健康状態をチェックしておくことをおすすめします。

※1参考:国立がん研究センター がん情報サービス「最新がん統計」
※2参考:日本がん登録協議会事務局「わが国における最近の大腸がん増加とその背景」

便潜血検査でがんのリスク診断が可能

便潜血検査は、大腸がんの疾患リスクを診断するために行います。検査方法は、1日もしくは2日分の大便を検査専用のスティックで採取し、便に血液が混ざっていないかを診断します。近年は大便を1日に1回ずつ2日に分けて採取する「便潜血2日法」が主流で、通常は検査当日を含む3日以内の便で検査します。

便潜血2日法は、厚生労働省から死亡率減少に効果的であると認められた大腸がんの検査方法です。 自宅で採便するだけなので、大腸がんの検査が初めてという方にとっても、受診しやすくおすすめです。

大腸がんが発生すると多くの場合、下部消化管内で出血します。そのため、採取した大便に血液が混ざっていれば、がんの恐れがあると判断することができます。この検査では、特殊な抗体を用いて便表面の血液を検出するので、出血量が少なくてもがんのリスク診断が可能です。

便潜血検査のメリットとデメリット

便潜血検査は、一般的に検査専用のキットを使って採便後、医療機関へ提出します。来院する手間がないため、時間に余裕がない方でも気軽に検査が受けられるのがメリットです。ただし、便に血液が混じっているかどうかを調べる検査なので、潜血反応の有無に関わらず大腸がんを患っているケースもあります。大腸がんのスクリーニングをする暫定的な検査であることは理解しておきましょう。

メリット
  • 来院なしで気軽に検査を受けることができる
  • 大腸内視鏡検査など他の大腸がん検診の検査項目中では、検査費用が安い
  • 採便なので身体的な負担はない
デメリット
  • 潜血反応があってもがんかどうかの診断はできない(偽陽性)
  • 潜血反応がなくてもがんではないと言い切れない(偽陰性)
  • 検査を化学法で行う場合は食事制限・薬剤制限がある(免疫法では制限なし)

便潜血検査にかかる費用

便潜血検査にかかる費用は受診方法によって異なります

便潜血検査にかかる費用は、受診方法によって異なります。会社の健診で実施する場合や自治体で実施している検診であれば、年齢によって無料または補助があることが多いです。人間ドックや任意の医療機関で受診する場合は自由診療(全額自己負担)となります。
また、自治体よっては制度を設けていないケースもあるので、気になる方は住まいを管轄する自治体のがん検診窓口に問い合わせてみましょう。

自費の場合

■費用 1,000~2,000円ほど(※医療機関によって異なる)

自費で受診する場合の費用は、1,000~2,000円ほどが一般的です。任意の医療機関での受診となります。人間ドックの検査項目として設定されている場合や、オプションで検査を追加できることもあります。大腸がん検診と一緒に、全身の健康状態をチェックするのも良いでしょう。

便潜血検査だけを受診したいときは、受けたい医療機関が個別に受付しているか確認が必要です。実施していない医療機関もあるのでまずは問い合わせてみましょう。

自治体からの助成・補助利用の場合

■費用 無料~1,000円ほど(※加入の健康保険組合によって異なる)

市区町村による住民健診や職場での検診の場合、自己負担額はそれぞれ異なります。たとえば、40歳以上は数百円、70歳以上の場合や住民税非課税世帯に属する場合は検診費用が無料となる自治体もあります。詳しくは各自治体のがん検診ホームページ、またはがん検診窓口へ問い合わせてみてください。

健康保険組合による補助がある場合も

また、加入している健康保険組合でも受診補助や一部費用を負担してくれるケースがあります。会社の健診時にオプションとして受診ができる場合や、任意の医療機関で各自受診するケースなど、会社や健康保険組合によって助成内容が異なるのでチェックしてみてください。また、申請する場合は検査を受ける前に行うことが一般的です。検査後の申請は認められないことが多いので、制度の有無や申請方法は必ず事前に確認しておきましょう。

採取時の注意事項と結果の見方

便採取時の注意事項通常、便潜血検査キットには採便方法の説明が添付されているので、採便前に必ず確認しましょう。採便時に注意したいのは、トイレの洗浄水に便が浸かってしまわないようにすることです。洗浄水には消臭成分や消毒液が含まれているため、便に洗浄水がついてしまうと正確な判定ができなくなってしまいます。

また、採取するときには、便の表面をまんべんなくこするようにするのがポイントです。採便用のスティックには先端に溝があるので、この溝が埋まるまで採取します。便の量が少ないと正確に検査が行えないこともあるので、採取量は守るようにしましょう。

便潜血2日法の場合、検査当日を含む3日以内の便を提出します。そのため、連続する3日間のうち1日1回・2日間の便をとる必要があります。なかには便秘がちで毎日は便通がないという方がいるかと思いますが、3日間で排便ができないときは、最初に取った便を冷蔵庫で保管しておきましょう。室温が高いところへ便を保管しておくと、ヘモグロビンが変性(タンパク質の構造が壊れること)してしまい正しい結果が得られなくなります。便を冷蔵庫に保管することに抵抗がある方は、直射日光を避けた25℃以下の涼しい場所で保管します。

採便は1日のみの提出でも構いませんが、出血は継続的ではないので、1日分では検査結果の精度は下がります。なるべくは2日分提出するようにしましょう。また女性の方は、生理中は採便できません。生理期間中に検査が重なる場合、生理終了後2~3日間を空けて検査を行うようにしてください。

検査結果の見方と内視鏡検査の判断について

検査結果には、陽性(+)か陰性(-)が記載されます。陰性(-)であれば潜血反応なし、陽性(+)であれば潜血反応ありです。もし結果が陽性だった場合は、大腸がんの恐れや下部消化管に何かしらの異常が発生していると考えられるので、速やかに大腸内視鏡検査を受けましょう。

潜血反応が出た場合、その原因として挙げられるのは大腸がんや大腸ポリープ以外に、痔や生理などでの出血です。痔を患っていると便の中に血液が混ざることがあります。また生理の経血や不正出血による混入も挙げられます。

便潜血検査の結果だけでは、具体的にどのような疾患が発生・進行しているのかまではわかりません。原因判明のためにも陽性反応が出た場合には、速やかに大腸内視鏡検査を受診することが大切です。

精密検査は大腸内視鏡で

精密検査は大腸内視鏡で便潜血検査で陽性反応が出てしまったら、精密検査として大腸内視鏡検査を受けましょう。
便潜血検査の陽性率は約5~7%、その陽性反応が出た受診者が精密検査の結果、大腸がんが発見される確率は約2~3%と言われています。
大腸内視鏡検査は決して負担の少ない検査とはいえませんが、検査をうけなければ大腸がんがあるかどうかはわかりません。もちろん便潜血検査が陽性でも大腸がんがない方も多くおられますが、もし大腸がんがあった場合は大変です。大腸がんは早期に発見すれば治癒が十分に期待できるがんですが、ある程度進行してしまうと治癒は見込めなくなってしまいます。

大腸がんが肛門の近くにできた場合、手術で治癒ができたとしても人工肛門になってしまう場合もあります。なるべく早期に発見することで人工肛門になることを避けることが可能になります。

また、早期がんの中でも粘膜内がんとよばれるさらに早い段階でがんをみつけることができれば、入院することなく日帰りで内視鏡手術で治癒できることもあります。
このように大腸がんを早期に発見するメリットは多くあります。便潜血検査で陽性となってしまった方は必ず大腸内視鏡検査を受けましょう。

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まとめ:大腸がん検診は便潜血検査と内視鏡検査の併用で

大腸がんの発生は、年齢だけでなく食生活などの生活習慣にも影響されます。脂肪や糖分の多い食事や飲酒を控え、日々の生活環境を見直すと同時に、大病を発症する前に病気の芽を発見することが大切です。まずは年に一度の便潜血検査を受診しましょう。そして2~3年に一度は大腸内視鏡検査を受診することにより、より正確に大腸の健康状態を把握することができます。定期的な検診で病気を予防し、健康な毎日を送りましょう。

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