大腸がん検診の内視鏡検査|ほかの検査との違いや重要性について

がん検診

大腸がん検診の内視鏡検査|ほかの検査との違いや重要性について

桜が岡内科クリニック院長 金尾浩幸先生

この記事の監修ドクター

桜が岡内科クリニック 院長
金尾 浩幸

【略歴】
2000年 徳島大学医学部 卒業
【資格】
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本内科学会認定 総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医

大腸がんは症状があらわれた時には進行癌のことが多く、早期癌や前癌病変にあたるポリープの状態の時は、ほとんど自覚症状がありません。
高脂肪・低食物繊維といった食生活の欧米化による影響が大きいといわれており、40歳を過ぎたら大腸の検査を受けることをお勧めします。

大腸がんの検査方法はいくつかありますが、なかでも大腸がんの確定診断をする「内視鏡検査」は、もっとも精度の高い検査です。内視鏡を肛門から挿入して検査することは知っている方も多いと思いますが、実際にはどのような検査内容なのか、検査の具体的な流れやメリット・デメリット、他の検査方法との違い、内視鏡検査の重要性について詳しく解説します。

目次
  1. 大腸がん検診の種類と目的|早期発見で治癒の可能性が高まる
  2. 内視鏡検査の内容と費用感について
  3. 医療機関を選ぶ際の5つのポイント
  4. 内視鏡検査の流れと注意点
  5. まとめ:40歳を過ぎたら、大腸内視鏡検査を受けましょう

大腸がん検診の種類と目的|早期発見で治癒の可能性が高まる

大腸カメラ

一般的に、対策型検診として市区町村で行われる大腸がん検診は「便潜血検査」ですが、人間ドックなどの任意型検診では他にもいくつかの検査方法があり、それぞれに早期発見・早期治療に役立てられています。それぞれの特徴を解説します。

便潜血検査
便に血液が混じっているかを調べる検査です。しかし痔による出血でも陽性になるほか、大腸がんや大腸ポリープがあったとしても、出血していないと陽性にならないというデメリットもあります。身体への負担は全くない検査です。

S状結腸内視鏡検査
左下腹部に位置するS状結腸までを調べる内視鏡検査。大腸全体の内視鏡に比べると前処置は容易ですが、基本的に上行結腸、横行結腸、下行結腸のがんを見つけることはできません。

腫瘍マーカー検査
血液検査で特定の物質を調べる検査。採血するのみなので体への負担はほとんどありませんが、進行がんにならないと異常値を示さないことが多いです(早期がんでは腫瘍マーカーはほとんど上昇しません)。

大腸CT検査
下剤を内服しある程度大腸を空っぽにした上で、炭酸ガスで大腸を膨らませ、CTで撮影する検査です。内視鏡を挿入しないので身体への負担は少ないですが、下剤を内服していただいたり、炭酸ガスで大腸を膨らませるのである程度身体への負担があります。

平坦な早期がんやポリープはなかなか見つからない、医療被ばくしてしまうといったデメリットがあります。

このように4種類の検査にはそれぞれ特徴がありますが、どの検査で異常所見があった場合でも必ず、精密検査として「大腸内視鏡検査」が必要になります。つまり、大腸がんの確定診断をするためには大腸内視鏡検査が必須となるのです。

そのため、人間ドックを受ける方の中には、便潜血検査を行わず、はじめから大腸内視鏡検査を受ける方も多くいます。内視鏡検査を受けることで、大腸の状態をより正確に把握することができるため、今後の健康維持・管理に役立てることが可能です。

罹患数1位・死亡数2位の大腸がんは、40歳頃から発症率が増加

大腸がんは男女とも40歳頃から発症が増加する傾向にあります。また、年齢に関わらず、食生活の乱れ、喫煙、過度のアルコール摂取など日頃の生活習慣によっても疾患リスクが高まります。

統計ではがんの中で罹患数1位、死亡数2位という結果が出ており※誰もが注意しなければいけない疾患といえるでしょう。
※国立がん研究センターがん情報サービス最新がん統計

以下に当てはまる人は内視鏡検査をおすすめします

内視鏡検査の受診が推奨される人のプロフィールとしては、以下のような例が考えられます。検査費用についても参考にしてみてください。

【自覚症状があらわれている】
下痢・便秘などの便通の異常、便が細くなった、血便、粘液便、慢性の腹痛などの症状があらわれている場合には、一度内視鏡検査を受けることをおすすめします。

【大腸がんリスクが高い40歳以上】
大腸がんは、男女ともに40歳を過ぎると発症リスクが高まってきます。とくに女性の大腸がん死亡数・罹患数は、がん疾患のなかで1位・2位(男性は共に3位)と非常に多いため、気になる症状がなくても早めに受診しておくことが大腸がんの早期発見につながります。

【食事や嗜好習慣が偏っている】
大腸がんの発症には、食生活・喫煙歴・飲酒量なども関連すると言われています。LDL(悪玉)コレステロールを増やす動物性脂肪の多い料理が中心の食生活、長年の喫煙習慣、アルコールの摂取量が多いという方は、大腸がんの発症リスクが高い環境にあります。

会社の健康診断で生活習慣病を指摘されている方も発生要因は高いと考えましょう。

【家系にがんが多い】
家族歴ともいわれますが、家系でがんの遺伝的因子を持っていると発症リスクが高まる傾向にあります。

とくに大腸がん・子宮がん(子宮体がん/子宮内膜がん)・胃がんは遺伝的要因が強いがん疾患なので、家系で発症者がいる方は、現時点で無症状だとしても自主的な受診をおすすめします。

内視鏡検査の内容と費用感について

対応施設であればポリープ切除も可能

大腸内視鏡検査は、内視鏡を肛門から挿入して大腸(盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸)を調べる検査です。挿入している時間は15分程度です。大腸全体を目視でチェックしながら撮影していきます。
検査中にポリープが発見された場合には、ご希望であれば内視鏡の先端からスネアという金属の輪のようなものを出して切除し、良性か悪性かを判断するための病理検査へと提出されます。
静脈注射による鎮静剤を使用した場合は、ウトウトした状態の中で検査が行われるため、受診者が目覚めたら検査は終わっています。

内視鏡検査のメリットとデメリット

直接大腸内を確認できる内視鏡検査は得られる情報量が多く、ポリープを発見した場合、医療機関によってはその場で切除・組織の採取ができるといったメリットがあります。その反面、体への負担などのデメリットもありますので、以下に詳しく解説します。

メリット
【得られる情報量が多い】
大腸がん以外にも、良性の大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性腸炎、感染性腸炎など様々な大腸の疾患を診断することができます。
【病変を直接チェックできる】
便潜血検査や腫瘍マーカー検査で陽性反応が出た場合は、原因を診断するために大腸内視鏡検査を受けなければなりません。
その点で内視鏡は腫瘍やポリープをカメラで直接確認できるため、検査は一度で済みます。ポリープが発見された場合、医療機関によっては検査中に切除できます。※内視鏡検査と同時のポリープ切除を実施していない医療機関の場合は、別途処置日を改めて再度準備をして検査・治療となります。
デメリット
【体への負担がある】
内視鏡検査を受診する前日夜~当日にかけて大量の下剤(1.5L程度)を服用し、便をすべて出し切らなければなりません。便が透明になるまで何度も下剤を飲む必要があります。人によっては検査自体にある程度の苦痛を伴います。
【拘束時間が多くかかる】
内視鏡検査自体は10~15分程度で終了しますが、下剤を内服するなどの全処置に3時間程度かかります。また、鎮静剤を使用した場合、検査終了後に1時間程度の休憩が必要です。多くは午前中に下剤を内服し、午後から検査を行いますのでほぼ丸1日かかる検査です。
鎮静剤の使用をご希望の場合は自動車や自転車での来院ができなくなるため、移動手段が制限されます。内視鏡検査は必ず医師が検査を実施するため、医療機関や受診希望日によっては予約が取りにくいことも多いです。
【“偶発症”の危険性】
内視鏡を使用した検査では、まれに出血や穿孔を起こすケースがあります。消化管という狭い管の中にチューブを通すので、検査機器が腸壁にあたる・擦れるなどして出血や穴が空いてしまう危険性があります。検査・治療中に偶発的に起こる医療症状なので、偶発症と呼ばれます。
非常に稀ですが死亡例も報告されていますので、メリットとリスクを良く理解した上でより内視鏡に特化した施設で検査を受ける方が良いかもしれません。

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内視鏡検査以外の大腸がん検診の検査方法についての詳細

内視鏡検査にかかる費用

大腸の内視鏡検査にかかる費用は、人間ドックなどの自費診療の場合で20,000円前後、保険診療の場合で数千円~20,000円ほどです。初診料や血液検査、病理検査、ポリープの切除を行うことなどを含めて想定すると、一度の検査で、高い時にはこれ以上の費用がかかるケースもあります。
医療機関によって検査費用は異なるので、事前にホームページで確認するか、電話で問い合わせしておくとよいでしょう。

医療機関を選ぶ際の5つのポイント

医療機関を選ぶ際の5つのポイント

実際に内視鏡検査を受診したいと思っても、検査を実施している医療機関は多くあり、何を基準に選べばいいのか判断に迷う方もいるかと思います。医療機関を選定するために重視したい5つのポイントを紹介します。

1 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医が在籍している

消化器内視鏡専門医とは、高度な研修を修了し資格を取得した消化器内視鏡専門の医師のことです。専門性の高い医師が在籍していることは検査技術、安全面でも期待できる医療機関といえます。

2 鎮静剤・鎮痛剤を使用してくれる

大腸内視鏡検査は前述のとおり、ある程度の苦痛を伴う場合があります。検査に対して不安の強い方や、前回検査を受けた際につらかった方などは、鎮静剤や鎮痛剤を使用してくれる施設がおすすめです。ただし、鎮静剤や鎮痛剤を使用した場合、当日は車や自転車などの運転ができなかったり、稀に薬の副作用が起こったりすることもありますので、希望する場合は当該施設とよく相談することをおすすめいたします。

3 内視鏡検査と大腸ポリープ切除を同時に行ってくれる

大腸内視鏡検査で大腸ポリープが見つかったけれど、その医療機関ではポリープ切除を行うことができない場合は、観察のみで一旦検査が終了となります。後日、大腸ポリープ切除を行なっているクリニックや医院を受診し、再度、大腸内視鏡検査を受けるのと同じ準備(つまり大量の下剤内服が必要)をしてポリープ切除手術に臨まなくてはなりません。
内視鏡で切除可能なポリープがあった時のことを考え、観察とポリープ切除を同時に行うことができる医療機関を選ぶことをおすすめします。

4 新しい内視鏡設備が導入されている

医療機関によって導入している設備は異なりますが、内視鏡の性能もパソコンや電化製品などと同じで新しいものの方が改良されており、検査をより楽にうけられるように様々な工夫がされています。
また、新しい設備が導入されている施設はそれだけ内視鏡に力をいれているともいえるかもしれません。

5 内視鏡の洗浄をガイドラインに沿って行っている

内視鏡は患者さんの体内に入る医療機器です。そのため、日本消化器内視鏡学会、消化器内視鏡技師学会、日本環境感染学会などにより「内視鏡洗浄消毒ガイドライン」が出されており、確実な内視鏡管理が求められています。そのガイドラインに基づいた洗浄、消毒、管理を実施していることもその施設を選択する基準の一つにしても良いでしょう。

内視鏡検査の流れと注意点

大腸内視鏡検査を受診する流れ(前日・当日・検査終了まで)と、検査で注意しなければいけないポイントを紹介します。

前日

  • 朝食・昼食は消化に良い食事を摂る(施設によっては指定の検査食)
  • 夕食は軽めの消化に良い食事(施設によっては指定の検査食)を夜20時頃までに摂る
  • 水分は多めに摂取する
  • 就寝前に下剤(通常の便秘薬)を服用する

当日

  • 朝食は摂らず絶食(水分は摂っても良い、喫煙は禁止)
  • 下剤を服用(大腸内視鏡専用の下剤を1.5L程度)し、腸管の中の残留物を全て排出する(便が透明になるまで下剤の服用を繰り返す)
  • 医療機関で受付を済ませ、検査着に着替える
  • 便の色が透明になっていない場合、医療機関内でも下剤を服用し腸内をきれいにする
  • 鎮静剤を使用する場合は検査直前に静脈注射で投与
  • 検査実施

検査終了

  • 鎮静剤の効果が切れるまでリカバリールームで30分〜1時間程度休憩
  • 検査結果を医師から説明(指導や今後の治療方針なども併せて説明)
    ※ポリープの切除や病変組織を採取した場合には、各医療機関の指示に従ってください。一般的には3日程度激しい運動を控え、刺激物やアルコールを避けた食事をしていただくことが多いです。
  • 着替えて帰宅(鎮静剤を使用した場合運転できないので徒歩や公共交通機関を利用)
  • 人間ドックや大腸がんドックなどで検診を受診した場合、検査結果の報告書が送付される

まとめ:40歳を過ぎたら、大腸内視鏡検査を受けましょう

40歳を過ぎたら症状がなくても一度大腸内視鏡検査を受けましょう。

頻度は少ないですが、大腸がんの罹患率は35歳ごろから上昇します(国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」より)ので40歳を過ぎたら症状がなくても一度大腸内視鏡検査を受けましょう。
他のがんでも同様な場合が多いですが、大腸がんも、血便や、便秘、便が細くなるといった症状が出現した時にはすでに進行癌であることが多いので、罹患率が上昇し始める40歳ごろから、症状がなくても大腸の内視鏡検査を受けることをおすすめいたします。

また、大腸の場合良性のポリープが癌化してしまうこともありますので、良性のポリープの段階で切除(多くの場合、内視鏡検査時の切除が可能です)することが、癌の芽を摘むことにつながります。

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