大腸がんリスクを調べる7つの検査と健診施設選びのポイント

がん検診

大腸がん検診の検査内容|がんリスクを調べる7つの検査と施設選びのポイント

監修ドクター

この記事の監修ドクター

きむら尾張町クリニック 院長
木村 寛伸

【略歴】
1985年 大阪医科大学 卒業
2017年 きむら尾張町クリニック 院長
【資格】
日本外科学会認定 外科専門医
日本消化器外科学会認定 消化器外科専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医

大腸がんは、一般的なイメージよりも頻発する「がん」かもしれません。いうまでもなく日本における死因1位はがんですが、部位別死亡数でいえば、肺がん・大腸がん・胃がんの順番です。しかも、女性にとっては、がんの部位別死亡数トップが「大腸がん」なのです(男性では3位)。

ただ、医療関係者の間では、大腸がんは早期発見によって治癒の可能性が高まるがんともいわれているため、大腸がん検診についてくわしく知っておくことが重要といえるでしょう。

この記事では、人間ドックなどでよく実施されている(あまり特殊ではない)大腸がん検診と健診施設を選ぶ際のポイントについて紹介します。

目次
  1. 大腸がんリスクを調べる7つの検査
  2. 大腸がん検診の施設を選ぶ2つのポイント
  3. まとめ

大腸がんリスクを調べる7つの検査

1.便潜血反応検査(2日法)

便潜血

便に血液が混じっているかどうかを調べる検査です。「基準値」は、陰性(-)。陽性(+)の場合、大腸がん、潰瘍性大腸炎、大腸ポリープなどに罹患している可能性が考えられます。目で見てもわからない程度のわずかな出血でも陽性(異常)となります。

自宅あるいは健診施設で便を採取して、指定の容器に入れて提出します。1回のみでは不確実なため、多くの施設では2回検体を提出します。

メリット
安価・簡便です。
デメリット
初期の大腸がんで陽性になることはまれといわれています。

検査の注意点としては、痔と間違われる要素を減らすために検体を2回提出することが一般的です。検査の相場は1,000円程度。

2.直腸診

肛門に指を入れて検査する方法です。指が届く範囲であれば、大腸がんのリスクを発見することにもつながるといわれています。

大腸がん検診の一環として、他の検査を受診する流れで医師の手で検査する場合が大半です。

メリット
知見を持つ医師が検査をすると、見つけやすい場合もあります。
デメリット
肛門から5センチ程度の範囲までしか検査はできません。

検査範囲が狭いため、他の検査と合わせた受診が推奨されています。大腸がん検診(2万円前後)の一環として実施される場合が大半です。

3.注腸造影検査

肛門から大腸に空気と造影剤(バリウム)を注入した上でX線を用いて撮影する(レントゲン)検査です。

肛門に細い管を挿入し、造影剤と空気を注入した上で、できるだけ大腸粘膜表面全体に造影剤を付着させるために身体を回転させた後、レントゲン写真を撮影します。

メリット
内視鏡を肛門から挿入する検査より負担感は軽減されるとされています。
デメリット
観察できる情報量が内視鏡検査より少ないとされています。

大腸がんの頻度が最も多いS状結腸は屈曲が強いため、レントゲン撮影上、重なりやすく、見逃しやすいといわれています。また、実際の検査では、頻繁な体位変換が必要なので、受診者は検査台の手すりにしっかりつかまる必要があります。

なお、人間ドックではほとんど実施されておらず、保険診療の場合、5,000円台が相場です。

4.大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

大腸内視鏡検査

肛門からファイバー状の内視鏡(大腸カメラ)を挿入して大腸の粘膜の状況を医師が直接観察し、大腸がん、潰瘍性大腸炎、大腸ポリープなどのリスクを調べます。医療関係者の間では、これらのリスクに対する検査として有用という声があり、評価が高い検査といえます。「下部消化管内視鏡検査」とも呼ばれます。

検査前に自宅あるいは健診施設で下剤を内服し、腸内を空にした状態で検査に臨みます。横向きに寝て、肛門から内視鏡を入れて奥へ進めていき、10分から30分程度かけて検査します。

費用の相場としては、2万円台が一般的です。

メリット
観察する画像がカラーであり、凹凸や色調変化、出血の有無の判断に役立つなど、得られる情報量が多いとされている検査です。もし、ポリープなどが見つかった場合、(多くの内視鏡に備わっているナイフの機能を使い)切除や組織採取などに対応する場合もあります。
デメリット
検査前の下剤服用など受診者に準備が必要なことや、内視鏡の挿入を負担に感じる場合があることなどといわれています。

5.大腸CT検査(CTコノグラフィ、大腸3D-CT検査)

大腸CT用の炭酸ガスを肛門より注入し、大腸を拡張させて撮影する検査です。

検査前に自宅あるいは健診施設で下剤を内服して、腸内を空にした状態で検査に臨みます。

メリット
大腸内視鏡検査と比較して、内視鏡のそう入にともなう負担感が少なく、検査後の腹痛・膨満感はかなり少なくなっているといわれています。
デメリット
仮に問題のあるポリープなどが見つかっても、切除や組織採取はできません。

医療関係者の間では今後、人間ドックなどの健診で増えるとの声もありますが、ポリープの切除などができない点には注意が必要です。

費用の相場は2~3万円台が一般的です。

6.腫瘍マーカー検査(血液検査)

腫瘍マーカー検査

消化器系がんの腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、p53抗体など)で大腸がんのリスクを調べる方法です。確定診断をする性質の検査ではありませんが、スクリーニングに役立ちます。

血液検査の一種のため、血液採取のみです。

メリット
安価・簡便です。
デメリット
他の検査とセットで受診しなければ、判断には役立ちません。

確定診断ができる検査ではないことに注意が必要です。

スタンダードな人間ドックの血液検査に含まれることが一般的です。単独のオプション受診の場合、マーカーの数によりますが、相場は数千円~1万円程度。

7.S状結腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査の一種で、肛門からS状結腸(50~60センチの範囲)までを内視鏡を用いて観察する簡易的な検査です。

検査前にグリセリン浣腸を行い、直腸にたまっている便をきれいにするだけで見える範囲の大腸を観察します。

メリット
大腸内視鏡検査(全大腸検査)と違って、検査前の下剤の服用がありません。
デメリット
大腸全体を見るわけではない、簡便な検査です。

大腸内視鏡検査とくらべると簡便です。便に血液が付いていた場合など、緊急的な診断には有用とされています。

人間ドックではほとんど実施されておらず、保険診療の場合3,000円台が一般的です。

大腸がん検診の施設を選ぶ2つのポイント

ポイント1. 大腸カメラを設定している検査コース

大腸がん検診には、上記のようにさまざまな検査がありますが、大腸がんリスクについてはっきりと把握しておきたいと考える場合、「大腸内視鏡検査(大腸カメラ、下部消化管内視鏡検査)」の受診は必須です。いわゆる「大腸がんドック」と呼ばれる検査コースの多くは、大腸内視鏡検査を検査項目として備えています。

ただし、上部消化管(食道・胃・十二指腸)をチェックする胃がん検診(あるいは消化器ドック)などと比べると、大腸がんドックの設定が少ないことも事実です。医療機関の一覧から設定の有無を探してみましょう。

ポイント2. 大腸がんに関する知見・内視鏡検査の経験

大腸がんなどの大腸関連の疾患について、知見を持つ医師が検査にあたるかどうかもポイントです。そういった知見を持ち、内視鏡検査に精通している医師であるほど、受診者への負担が少ない形で疾患リスクを発見したり、必要があればポリープ切除などの処置にも対応できるといわれています。

こうした医療機関の特質は、医療機関のHPに掲載されている場合があります。こちらも受診する医療機関の情報をチェックしてみましょう。

まとめ

大腸がんは、めずらしいがんではありません。食生活や生活習慣の欧米化も原因のひとつとされており、近年は増加傾向が指摘されています。また、医療関係者の間では、大腸がんリスクの上昇と関連する危険因子として、過体重や肥満が指摘されています。

自覚症状がないときに大腸がん検診などを受診することによって死亡率が低下したという事実が、科学的に確かめられています。危険因子を持つ自覚があり、はっきりと大腸がんリスクを把握したいのであれば、大腸がん検診の受診は大いに意味があるといえるでしょう。

また、他のがんリスクや、心臓病・脳卒中など他の疾患リスクと合わせて、ある程度は大腸がんリスクも知っておきたいという場合などは、費用や受診に要する時間など、受診者自身の都合に合わせて選択していくことになります。基本的な「便潜血反応検査」は、スタンダードな人間ドックであれば必ずといってよいほど検査項目に設定されています。

繰り返しますが、明確に大腸がんリスクについて確かめたいのであれば、「大腸内視鏡検査」の受診が第一選択といってよいでしょう。

まずはお近くのエリアから大腸がん検診を受診できる医療機関を検索してみましょう。大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の検査が受診できるか、など検査コースや料金を比較しながらWeb予約まで可能です。

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