人間ドック

人間ドックで胃の検査|バリウムがベスト?検査の特徴と注意点まとめ

会社の健康診断で胃バリウム検査を受けたことがある方は多いでしょう。胃バリウム検査は、「バリウム(胃部造影剤)の味が苦手」「飲み方がきつい、苦しい」「ゲップを我慢しなくてはならない」など、受診する前も後も大変な思いをする検査だといわれています。しかし人間ドックで実施している胃の検査には、他にもいくつかの検査方法があります。

ここではバリウム検査のメリット・デメリットを中心に、胃カメラ検査など、他の胃の検査方法についても説明します。

目次
  1. 診断精度は7割以上|ぜひ受けておきたい胃バリウム検査
  2. バリウム検査ってどんな検査?
  3. 胃バリウム検査の特徴と注意点
  4. 検査方法により費用や予約の取りやすさも違う
  5. まとめ:自分に合った検査方法で定期的な胃の健康チェックを

診断精度は7割以上|ぜひ受けておきたい胃バリウム検査

2人に1人がかかる病気だといわれ、今や国民病とみなされているがんですが、その中でも「胃がん」は死亡数・罹患数の多い疾患です。(※1)しかもがんは、一度治療しても他の健康な部位へ転移するなど再発の危険がある恐ろしい病気です。再発や再燃を繰り返さないためには、初期のうちに発見して完全に悪い細胞を取り除いてしまうことが何よりも重要となります。

健康診断や人間ドックで実施される「胃バリウム検査」は、胃がんの対策型検診として国が推奨している検査方法です。胃バリウムを用いたがん診断の精度は約70~80%といわれ、その検査感度の高さから胃がんによる死亡率を減少させるために有用な検査であるとされています(※2)
※1 国立がん研究センターがん情報サービスより
※2 公益財団法人 日本対がん協会より

バリウム検査ってどんな検査?

胃バリウム検査のイメージ

胃バリウム検査は、胃を含む上部消化管全体の健康状態を調べるのに役立つ検査です。その流れと目的を解説します。

どのような仕組みで検査をするか

バリウム(胃部造影剤)を飲んだ後、検査台の上で体の向きを上下左右に回転させて、上部消化管(食道から胃、十二指腸まで)内を流れるバリウムをX線で撮影し、胃の形や粘膜上に異常がないかを確認する画像検査です。

バリウムが食道や胃を流れる動きは、実際に食事をしたときに食べ物が体の中を通る動きと同じなので、上部消化管内が狭くなっていないかどうかの異常をチェックすることができます。また、バリウムを胃の粘膜に付着させると、がんや胃潰瘍などによる胃の内部の凹凸の有無を確認することもできます。

どのような病気・病変を調べられるのか

胃バリウム検査は、胃・食道・十二指腸のがん疾患のほか、胃潰瘍や胃炎、ポリープなどを早期発見することが目的です。

万が一がんや胃潰瘍ができている場合、その箇所の粘膜には凸凹ができるなどの変化が見受けられます。凹凸があるとバリウムが流れるとき粘膜へ付着するため、その部分のみX線で撮影されず、画像で異常を判別することができます。

胃バリウム検査で判別できる潰瘍は細胞が欠損した状態なので、もし胃に潰瘍ができている場合はそこにバリウムが流れ込み、画像に異常が写ります。逆に粘膜が盛り上がっているような箇所は、潰瘍の治癒痕であるケースもありますが、がん細胞である恐れもあります。

胃炎を患っている場合、緊急性はありませんが、慢性胃炎だと胃がんの原因となるピロリ菌への感染が疑われるため、二次検査でピロリ菌検査を実施します。その結果、治療や処置を行うことで、今後大きな病気にかからないための予防となるのです。

胃バリウム検査の特徴と注意点

特徴

【受診費用が安価】

人間ドックなど任意型検診にかかる受診費用は、基本的にすべて自己負担です。胃バリウム検査は胃カメラ検査に比べると安価なため、検査費用を抑えることができます。画像診断で異常が見つかった場合は二次検査が必要になりますが、気になる所見や異常がなければさらなる精密検査の必要はありません。
胃バリウム検査は、発泡剤やバリウムの飲みにくさや、検査後の排出までの苦労もありますが、比較的安い金額で診断精度に一定の評価がある検診方法です。胃がんリスクを予防するための、健康の維持・管理に適した検査だといえるでしょう。

注意点

【飲むことの苦しさ】

バリウムは「飲むのがつらい」という声が多く聞かれます。理由はいくつかありますが、一つにはバリウムの味がまずいということが挙げられます。粘度の高い白い液体は喉越しが良いものではなく、おいしいとは言い難い検査液です。一気にごくごく飲み干すことがバリウムを上手に飲むコツだといわれますが、バリウムの味に苦手意識を持つ人は多いようです。また、ゲップを我慢しないといけないこともつらさの一つです。胃バリウム検査では事前に胃を膨らませておく必要があり、バリウムの前に発泡剤も飲まなくてはいけません。発泡剤はガスを含んでいるため、飲んだ後は炭酸飲料と同じようにゲップが出やすくなります。検査終了までゲップを我慢するのが辛いと感じる受診者も多いでしょう。

【被ばく】

他に気になるのは、胃バリウム検査による被ばくです。胃をさまざまな角度から8カット撮影するため、検査中の2~3分間は放射線を浴び続けることになります。胃バリウム検査の実効線量は約1~2mSv(ミリシーベルト)で、胸部X検査やマンモグラフィなど他の放射線を用いた検査よりも高いというデメリットがあります。人体に影響を及ぼす線量ではないといわれていますが、被ばくするということは理解しておきましょう。

【下剤による排出】

そして検査後は、バリウムをなるべく早く体外へ出すために下剤を飲みます。下剤の効果は4~5時間であらわれますが、完全に排出しきるのは翌日です。このとき、バリウムがうまく排出されないと便秘や、ひどいときには腹膜炎になる恐れもあります。検査前から検査後まで大変な思いをしなければいけないという点が、胃バリウム検査の苦手意識に拍車をかけているようです。

【誤嚥】

バリウムを誤嚥してしまうと気管や肺に炎症が起こってしまうことがあります。普段から嚥下にムセてしまう方は、受診される施設に相談するとよいでしょう。

検査方法により費用や予約の取りやすさも違う

上部消化管の検査方法には、胃バリウム検査以外にも「胃カメラ検査」と「胃ABC検査」という方法があります。検査方法によって費用や予約の取りやすさも変わります。ここで各検査方法の特徴と費用について解説します。

胃バリウム検査

*検査費用:5,000~7,000円程度
*予約の取りやすさ:★★★(機器台数や日程による)

胃バリウム検査はバリウムが飲みにくく、便秘になる不安があるなど、人によっては悩ましいことが多い検査方法ですが、胃がんや食道がんの発見に有用です。がん以外にも胃潰瘍や胃炎、ポリープの発見にも強いというメリットがあります。発泡剤とバリウムを飲んだ後すぐに検査を行うため、撮影にかかる時間は10分程度と短めです。

X線を用いた画像検査のため、通常はレントゲン技師が対応します。医療機関によって検査機器の台数や技師の人数が限られることから、予約の取りやすさは日程によって異なります。万が一、画像に異常が見受けられたときは二次検査が必要となるケースはあるものの、気になる所見や異常がなければ、医師の指示がない限り次回受診は一年後で問題がないことが一般的です。受診費用は胃カメラ検査よりは安価です。

胃カメラ検査

*検査費用:6,000~10,000万円程度(医療機関や検査コースによって異なる)
*予約の取りやすさ:★★

胃カメラ検査とは、内視鏡を使って口から管を通す経口検査、あるいは鼻から管を通す経鼻検査によって胃の内部を観察し、病変を肉眼で発見する検査方法です。

検査では上部消化管内視鏡の使用と、場合によっては鎮静剤も使用することがあります。検査自体は10~15分ほどで終了しますが、鎮静剤を使った場合、受診者はその作用が切れるまで休む必要があります。

また、胃カメラは医師のみが実施できる検査です。そのため医療機関で1日に受け入れできる人数が限られ、日程によっては予約が取りにくい場合もあります。かかる費用は胃の検査の中でもっとも高めですが、内視鏡を使って直接胃内部の状態を確認できるので、ポリープを発見した際にはその場で処置することができ、他の疾患の場合でもすぐに治療へと移行することができます。病変の発見から治療までがスムーズという点で、高いメリットのある検査方法といえます。

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胃ABC検査

*検査費用:4,000円程度
*予約の取りやすさ:★

胃ABC検査は血液検査で、胃バリウム検査・胃カメラ検査と比べると一番安価な検査方法です。この検査は胃の内部にピロリ菌がいるかどうかをチェックする検査のため、胃がんリスクの発見には有用ですが、それ以外の疾患とリスクを調べることはできません。しかし、血液検査で胃がんリスクを評価できるため、バリウムも胃カメラにも抵抗がある方にとっておすすめの検査方法です。

人間ドックのコースに含まれているケースがありますが、医療機関によってはオプションとして設定できる場合もあります。胃がんリスクの有無をより詳細に知りたいときには、検査を追加するという方法も取ることができるかと思います。受診できる医療機関が限られるという意味で、予約の取りにくさを感じるでしょう。

まとめ:自分に合った検査方法で定期的な胃の健康チェックを

胃を含む上部消化管で起こる疾患には、胃がん、食道がんをはじめ十二指腸胃潰瘍やポリープなど多くありますが、なかでも死亡数・罹患数が多い胃がんのリスクには十分に注意が必要です。検査方法には、胃カメラ・胃バリウム・胃ABC検査と複数の検査方法から選ぶことができます。検査内容の向き不向き、費用感、確認したい疾患やリスクがチェックできるかどうか、検査の特徴や注意点を理解して、自分に合った検査方法を選ぶことが大切です。

胃がんリスクは特に40代以上の男性で高まる傾向があり、年に一度の受診が推奨されています。40歳を過ぎたら定期的に検査を受診して早期発見・早期治療につなげましょう。

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