心臓ドック

心臓MRIでわかる病気のリスク| 検査内容と費用について

沼田脳神経外科循環器科病院 赤尾 法彦先生

この記事の監修ドクター

沼田脳神経外科循環器科病院 院長
赤尾 法彦

心筋梗塞や狭心症などの心臓病は、普段の生活習慣やストレスが関連して発症することがある突発性の高い病気です。自覚症状がなくても50歳代半ばからは注意すべき疾患といわれ、近しい年齢の方には定期的な受診が推奨されます。

心臓病の検査方法の一つに「心臓MRI」という方法がありますが、この検査は体への負担が少ないことが特長です。心臓MRIの検査内容と費用について、詳しく解説します。

目次
  1. 心臓MRIについて
  2. MRI検査の注意点
  3. 心臓MRIやほかの検査を合わせた「心臓ドック」
  4. まとめ:体への負担が少ないMRIは心臓疾患を調べやすい検査方法

心臓MRIについて

MRI装置イメージ

心臓MRIとは、電磁気の力を利用したMRI(磁気共鳴画像撮影)装置を用いて、心臓に異常がないかを診断する検査方法です。MRIは体を傷つけることも、痛みを伴うこともありません。また、CTやX線検査のように放射線による被ばくを心配することもなく、がん疾患や腫瘍、血管の閉塞、動脈瘤などの発見に有用です。

また、検査内容によっては造影剤を使用することもあります。造影剤を使用しなくても検査自体はできますが、造影剤を用いなければ発見につながらない疾患もあるといわれます。医療機関によって異なるので、検査時の造影剤使用が気になる場合には事前に医療機関へ確認しておくと良いでしょう。

造影剤を使用しないで見つかる疾患

心臓MRI検査では、冠動脈の走行や血管の狭さ、血栓の有無などを調べることができます。冠動脈疾患とは、虚血性心疾患・狭心症・心筋梗塞などが代表的な病気です。

冠動脈は心臓の筋肉(心筋)へ酸素や栄養素を運ぶための血管です。動脈硬化などにより冠動脈に狭窄や閉塞を生じると、心筋へ十分な血液を送ることができなくなり、狭心症や急性心筋梗塞を引き起こす原因となります。MRIではこれらの疾患リスクを検査します。

造影剤を使用する「遅延造影MRI」とは

MRI検査でガドリニウムという造影剤を使用すると、心筋梗塞についての診断が行いやすくなります。これが、「遅延造影MRI」と呼ばれる検査です。

心筋梗塞や心筋症が起こると、症状が現れた箇所の心筋細胞が破壊されます。体内に取り込んだ造影剤は、通常は時間が経てばそのまま排出されていきますが、心筋細胞に損傷があると染み込んでいきます。心筋に染み込んだ造影剤を特殊な技術によって白く光らせてMRIで撮影することで、破壊された細胞の範囲や大きさ、深度、症状の重度・軽度をより詳細に診断することが可能となるのです。

心臓MRIの費用

心臓MRIの検査費用は、造影剤を使用するかどうかで異なります。また、受診する医療機関によっても金額が異なるので、受診を検討している医療機関へ事前に問い合わせておくと安心です。

造影剤の有無 かかる費用の目安
造影剤なし 約30,000~35,000円ほど
造影剤あり 約35,000~40,000円ほど

MRI検査の注意点

MRI検査時に持ち込み・着用不可のもの

MRI検査を受診するにはいくつかの注意点があります。全ての方が検査を受診できるわけではないので、注意点をよく確認し、不安がある場合には受診前に医師や医療機関へ相談するようにしましょう。

検査時に持ち込み・着用不可のものがあります

▼着用不可

  • 補聴器、入れ歯
  • コンタクトレンズ、カラーコンタクト、義眼※可動型の義眼の場合は検査不可。
  • 金属が含まれる備品(メガネ・時計・指輪・アクセサリーなど)
  • 金属が含まれる衣類や下着(ヒートテック、ベルトなど)
  • 使い捨てカイロ、絆創膏タイプの磁気治療器、湿布、経皮吸収貼付剤(ニトロダームなど)は外すこと

▼検査室内に持込不可

  • 財布、キャッシュカード、ICカード、携帯電話・スマートフォン、鍵など
  • アイシャドー、マスカラなど化粧品に金属が含まれている可能があるため、できるだけメイクをしないで検査を受けること

以下の方はMRI検査ができません

  • 心臓ペースメーカーを埋め込まれている方
  • 手術で体内に金属が留置されている方
    (脳動脈にクリップがある、もしくは心臓カテーテル検査によるステントなど)
    ※ただし金属の部分によっては検査可能のため、事前に医師へ相談しましょう。
  • 人工内耳がある方
  • 妊娠中もしくは妊娠の可能性がある方

医師に確認が必要な場合

  • 手術で体内に金属がある場合は基本的に検査は受けられないがが、金属の部分よっては検査可能
  • タトゥー(刺青)やアートメイクのある方は、検査を実施することで色あせや火傷の恐れあり。危険性を説明の上、同意書へ署名してから受診
  • 閉所恐怖症の方
  • 受診者が小児(7歳~14歳)の場合には付き添い者と一緒に入室して受診

※画像撮影のため20分程度は静止状態でいられること

その他、造影剤が使用できないケースとして、喘息やアレルギーを持つ方、過去に副作用など異変があった方、胃や腸に出血や炎症がある方、重度の肝臓疾患もしくは腎臓疾患者などがあります。造影剤を用いた検査を希望する場合は事前に医師に相談してください。

心臓MRIやほかの検査を合わせた「心臓ドック」

「心臓ドック」は心臓MRIだけでなく関連リスクを総合的に調べられる
心臓MRIだけでなく関連リスクを総合的に調べる「心臓ドック」を実施する医療機関も多くあります。MRI以外の複数の検査項目を組み合わせることで、多角的に疾患リスクを判断します。

検査内容には、心電図・血液検査・心臓CT・運動負荷心電図検査・心臓超音波検査(心エコー)などがあり、受診費用は大体4~5万円ほどです。全ての検査を終えるのに3時間ほどかかりますが、心臓疾患リスクを多面的に捉えることができるため、発症リスクが高まる50歳以降の方にはおすすめの検査コースといえるでしょう。

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まとめ:体への負担が少ないMRIは心臓疾患を調べやすい検査方法

心臓MRIは心臓疾患のリスクを調べる検査の中でも、体への負担が少なく被ばくの心配もないため、受診しやすい検査方法といえます。心臓疾患のリスクが高まる50歳代半ば~60歳代の方はもちろん、高血圧や糖尿病・高コレステロール血症など生活習慣病のある方、日頃からストレスの多い方は、心臓の健康状態をチェックするために検査を受けてみることをおすすめします。

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