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人間ドック

脂肪肝といわれたら?内臓脂肪を減らす対策と内臓脂肪CT検査のこと

大阪府済生会中津病院 総合健診センター 部長 田中督司先生

この記事の監修ドクター

大阪府済生会中津病院 総合健診センター 部長
田中 督司

【経歴】
1992年 京都大学医学科医学部 卒業
1992年 神戸市立中央市民病院 研修医
1994年 京都大学医学部 大学院
1999年 大阪赤十字病院
2007年 大阪府済生会中津病院
2015年 大阪府済生会中津病院 総合健診センター部長 就任
【資格】
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医

昨今、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や脂肪肝という言葉をしばしば聞きます。それらを抱えていると、生活習慣病や心臓病・脳卒中のリスクも増すのですが、内臓脂肪の蓄積は人の外見には反映しません。

ここでは、内臓脂肪について解説するとともに、内臓脂肪の面積を測定することで生活改善の重要な指標を得る内臓脂肪CT検査について紹介します。

目次
  1. 内臓脂肪は皮下脂肪よりも生活習慣病と密接に関係
  2. 内臓脂肪がつく原因と減らす方法
  3. 内臓脂肪面積100平方センチ以上がリスクのサイン
  4. 内臓脂肪CT検査はメタボリスクの程度を調べる
  5. まとめ:内臓脂肪CT検査はメタボリスクの程度を調べる

内臓脂肪は皮下脂肪よりも生活習慣病と密接に関係

「内臓脂肪」とは内臓のまわりに蓄積する脂肪分です。内臓脂肪が蓄積した結果、糖尿病をはじめとする生活習慣病になりやすく、心臓病や脳卒中のリスクが増します。この状態がメタボリックシンドロームと呼ばれます。

また、内臓のなかでも肝臓に脂肪が沈着した状態が脂肪肝です。肝臓の細胞の30%以上が脂肪化している状態です。近年では肥満を原因とする非アルコール性脂肪肝(NASH)が急速に増加しています。

いっぽう皮下脂肪とは、腰まわりなど皮膚の下に蓄積する脂肪分です(肥満として、外見からわかりやすいです)。医学の進歩によって、内臓脂肪のほうがより密接に生活習慣病と関係していることがわかっています。

内臓脂肪と皮下脂肪の違い

脂肪

内臓脂肪

  • 内臓のまわりに蓄積する(外からつまむことはできません)
  • 食事のカロリーバランスにじん早に反応する

皮下脂肪

  • 腰まわり、おしり、太ももなど皮膚の下に蓄積(つまむことができます)
  • 食事のカロリーバランスにゆっくりと反応する

生活習慣病と深く関連しているため、内臓脂肪の状況を把握することは、健康を維持していくために重要な指標となるのです。内臓脂肪の状況とは、内臓脂肪の面積を測定することです。

しかも、内臓脂肪が蓄積すると、多くの病気の前段階となる動脈硬化を進めます。その結果、糖尿病や高血圧、脂質異常症など生活習慣病はもちろん、心臓病・脳卒中のリスクも増していくのです。

しかも、そうしたリスクの程度を示す内臓脂肪面積は身体の外見からはわかりません。人間ドックや法定健診などを受診する必要があります。

内臓脂肪がつく原因と減らす方法

内臓脂肪がつく主な原因に、脂肪分の多い食生活があります。日本人の普段の食生活が欧米化され脂肪分の多い食事が増えた結果、内臓脂肪の蓄積は避けられなくなったのです。また、ストレスによる食生活の乱れも原因のひとつとされています。

運動不足も原因です。たとえば、デスクワークで座っていることが多い、運動をまったくしないなどといった生活をしていると内臓脂肪は消費されにくく、蓄積されていきます。内臓脂肪を減らすには、食生活に注意し、運動を日常的に心がけることが役立ちます。

食生活では、日常の食生活で野菜や青魚を中心とすることが代表的な対策です。野菜はカロリーオーバーを防ぐ第一歩です。イワシやサンマなどの青魚の脂肪分は不和脂肪酸で、内臓脂肪を減少させる効果があります。

ほかに、豆腐など大豆加工食品や海藻類なども食材として推奨されています。もちろん、ごはんなどの炭水化物や甘い物をひかえることも重要です。

運動では、呼吸して酸素をとり入れつつ運動していく方法が代表的な対策です。糖質とともに脂肪分を消費するためです。具体的にはウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などです。腕立て伏せやスクワットによって身体に筋肉をつけることも推奨されています。

内臓脂肪を減らす代表的な方法

  • 食生活⇒野菜・青魚(イワシ・サンマ)・豆類を中心としたメニュー
  • 運動習慣⇒ウォーキングや水泳、腕立て伏せなど

内臓脂肪面積100平方センチ以上がリスクのサイン

内臓脂肪面積100平方センチメートル以上が、メタボと診断される前提条件です。加えて、高血糖・脂質異常症・高血圧のうち2つ以上をあわせ持っているとメタボと診断されます。

もちろん外見から内臓脂肪面積はわかりません。そのため、スタンダードな人間ドックでは、検査項目の「腹囲」から判断します。

腹囲の数値が、男性なら85センチメートル以上、女性なら90センチメートル以上であると、内臓脂肪面積100平方センチメートル以上として扱われます。

さらに、血圧・空腹時血糖・脂質(中性脂肪・HDLコレステロール)のうち、いずれか2項目の数値が基準を超えると、腹囲と合わせてメタボと診断されます。具体的には次のとおりです。

  • 血圧 上(収縮期)130mmHg以上 または 下(拡張期)85mmHg以上
  • 空腹時血糖 110mg/dL以上
  • 中性脂肪 150mg/dL以上 かつ・または HDLコレステロール 40mg/dL未満

内臓脂肪CT検査はメタボリスクの程度を調べる

最近、人間ドックにオプションとして増えつつある「内臓脂肪CT検査」は、内臓脂肪面積が〇平方センチメートルという状況を明確に測定する検査です。メタボになるリスクの程度を知ることにつながります。

内臓脂肪CT検査では、へそまわりの腹部を輪切りにするイメージの画像を1枚撮影します。それを専用ソフトウェアで解析し、内臓脂肪面積を算出していきます。

なお、脂肪肝を調べる検査項目としては、腹部超音波検査(エコー検査)が代表的です。

まとめ:内臓脂肪CT検査はメタボリスクの程度を調べる

内臓脂肪面積が100平方センチメートルを超え、メタボに罹患するリスクが高いあるいはメタボと診断されたならば、食事・運動をポイントに生活習慣の改善が求められます。その効果を明確にみるためにも、「内臓脂肪CT検査」の定期受診は役立ちます。

内臓脂肪面積を定期的に知ることによって、感覚ではなく数値で効果を確かめることになります。それは、「内臓脂肪を〇平方センチメートル減らす」という目標を持つことになり、受診者自身の励みになります。

内臓脂肪CT検査

■受診費用 2~3千円ほど
■検査時間 5~10分ほど
■検査結果 数週後に郵送される場合がほとんど

なお、健診施設や検査コースによっては「内臓脂肪CT測定」と呼ばれるケースもあります。定期的にチェックして日常生活と今後の人生の指標にするのもよいでしょう。

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