動脈硬化

人間ドック

30代も知っておきたい動脈硬化のこと|早めの受診で定期的な血管年齢チェックを

この記事の監修ドクター

こさか内科・内視鏡内科 院長
小坂 英和

生活習慣の欧米化などを背景に、30代の若い世代でも動脈硬化の危険が指摘されています。

動脈硬化は心臓病や脳卒中の前段階のリスク要因です。人間ドックなどで定期的にチェックすることは、とくに若い世代の今後の人生にとって大切です。

ここでは、動脈硬化の解説を通じ、人間ドック受診の意味などについて紹介します。

目次
  1. 動脈硬化は心臓病や脳卒中の前段階
  2. 動脈硬化はゼロ歳児から。30代はリスクを減らす入口の年代
  3. 動脈硬化の程度を調べる検査項目
  4. 動脈硬化のリスク要因を調べる検査項目
  5. 食生活への注意と日常的な運動が動脈硬化予防の第一歩
  6. まとめ:人間ドックの定期受診でリスク要因のチェックを

動脈硬化は心臓病や脳卒中の前段階

動脈硬化

動脈硬化とは、動脈の壁が狭くなったり硬くなったことによって本来の働きに支障が出る局所的(不要)な身体の変化です。

具体的には、動脈の壁にコレステロールや脂肪分などがたまることによって動脈の弾力性や柔軟性が失われ、血液の通り道が狭くなり、つまりやすい状態を意味します。

脂肪(血中脂質)は生きていくうえで欠かせない栄養素です。脂肪は通常、肝臓に運ばれてほかの物質に変わったり、エネルギーとなって生命維持に利用されます。

しかし、脂肪が増えすぎれば 利用しきれずに動脈の壁にたまりやすくなります。こうした血管の変化(動脈硬化)は、心臓が動くエネルギーを供給する主要な血管である冠動脈や、大動脈のほか、脳・頸部・内臓・手足などの動脈によく起こります。

そして、この動脈硬化が前段階となって、狭心症・心筋梗塞などの心臓病や脳梗塞をはじめとする脳卒中(脳血管疾患)を引き起こす原因ともなるのです。

動脈硬化はゼロ歳児から。30代はリスクを減らす入口の年代

動脈硬化は突発的に生じるのではありません。人の血管は、生まれたばかりのゼロ歳児の時点で動脈硬化の初期段階が始まります。そして、動脈の内側の壁に脂肪分が沈着する状態(脂肪班)は20~30代からみられます。そのままにしておけば、やがて脂肪班が大きくなって血管の内側に向かって盛り上がっていきます。

この時点では自覚症状がある場合はほとんどありません。しかし、人間ドックを受診した結果、30歳の時点で心臓病や脳卒中の前段階といえるレベルの動脈硬化が見つかる例はめずらしくないのです。

それは見つかった時点で、すでに20~30年にもわたって動脈硬化が進行していたことを示しています。同時に、心臓病・脳卒中のリスクが高まっていたことも意味します。

人間は生きている限り、脂肪と無縁でいることはできません。そのため、どのように生活習慣に注意しても動脈硬化は避けられないのです。

ただ、動脈硬化の程度を定期的にチェックすることにより、心臓病や脳卒中のリスクを減らすことは不可能ではありません。30代は、その入り口に立つ年代といえます。

動脈硬化の程度を調べる検査項目

もし、心臓病や脳卒中の前段階レベルの動脈硬化が見つかっても、放置すれば発症のリスクを高めてしまいます。動脈硬化の程度を調べる検査は、スタンダードな人間ドックの検査項目に含まれていたり、脳ドックの検査項目に設定されています。主な検査は次のとおりです。

<血圧脈波検査>
心臓から押し出された血液によって生じた拍動が動脈を通じて手や足に届くまでの速度(脈波伝播速度)や、手足(四肢)の血圧を同時に計測して上腕と足首の血圧比の値を調べます。

脈波伝播速度から「動脈の硬さ(CAVI)」が判明し、上腕と足首の血圧比から「抹消動脈の狭さ(ABI)」がわかります。

血圧脈波検査は、検査台に横になった状態で受診します。なお、血圧脈波検査は「血管年齢検査」と呼ばれることもあります。

【血圧脈波検査の費用や検査時間】

■受診費用 1万円ほど
■検査時間 5~10分
■検査結果 数週後に郵送される場合がほとんど

<眼底検査>
眼球の奥の部分に走っている血管を観察し、動脈硬化の程度について情報を得る検査です。活動している血管を直接観察する唯一の検査という意味があります。

もちろん、緑内障や糖尿病網膜症など眼の疾患リスクも調べます。

【眼底検査の費用や検査時間】

■受診費用 1,000円台
■検査時間 数分ほど
■検査結果 数週後に郵送される場合がほとんど

<頸動脈超音波検査(エコー検査)>
首の両脇に超音波を発生するプローブをあて、頸動脈の状態やつまり具合を調べます。頸動脈は首の浅いところにありますから、超音波で見やすく、血管壁の0.1mmぐらいの厚さの変化をとらえることに有用です。

動脈硬化が進んでくると、血管は細くなって、ついには詰まってしまい、脳卒中を引き起こします。頸動脈エコー検査は、動脈硬化をごく初期段階でとらえることに役立つため、多くの脳ドックで検査項目に設定されています。

【頸動脈超音波検査の費用や検査時間】

■受診費用 3,000円ほど
■検査時間 10~15分ほど
■検査結果 数週後に郵送される場合がほとんど

動脈硬化のリスク要因を調べる検査項目

動脈硬化のリスク要因には、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満、糖尿病、ストレス、加齢などがあります。リスク要因を多く持つ人ほど、動脈硬化は進みやすいのです。

リスク要因の状況を調べるには、法定健診やスタンダードな人間ドックの検査項目が役立ちます。たとえば、動脈硬化が進みやすい高血圧の状態は、収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上とされています。

ほかにも注意すべき数値としては、次のものがあります。

  • 血液検査の「総コレステロール値」が220mg/dL以上
  • 1日20本以上の喫煙
  • BMI(体格指数:体重÷身長÷身長)が26.4以上

食生活への注意と日常的な運動が動脈硬化予防の第一歩

動脈硬化

動脈硬化が心臓病・脳卒中を引き起こすレベルにならないように予防するには、生活習慣への注意が大切です。まずは禁煙し、過度の飲酒をひかえ、動物性脂肪の多い肉類を摂りすぎないように食生活に注意しましょう。

また、ウォーキングやジョギングなどの適度な運動を日常生活に取り入れることも重要です。

なぜなら、動脈硬化のリスク要因のなかでも、「高血圧」「脂質異常症」「喫煙」が、3大リスク要因とされるからです。いずれも、生活習慣の改善によってリスクを減らすことにつながります。30代のような若い世代から注意を払えば、中年以降から努力するよりも効果的なのです。

それでも法定健診で「要注意」と指摘された場合は、動脈硬化が進んでいると思ってください。早めに人間ドックを受診し、動脈硬化の程度や心臓病・脳卒中のリスクも調べたほうがよいでしょう。重い病気の兆候が隠れているかもしれません。

まとめ:人間ドックの定期受診でリスク要因のチェックを

人間ドックは、現時点の動脈硬化の程度を示してくれます。人間の身体は刻刻と変化するので、年に1度は受診して変化に注意しましょう。

もし、動脈硬化の進行を示す検査結果が出た場合は、自らの意志で生活習慣を改善し、リスク要因のコントロールに努めてください。それはまた、心臓病・脳卒中といった重い病気のリスクが増える50代以降に対する備えでもあるのです。

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