人間ドック

血液検査でわかる病気とは|人間ドックで受診できる検査項目や結果の見方

菊池養生園保健組合 菊池広域保健センター 芹川和志先生

この記事の監修ドクター

菊池養生園保健組合 園長
芹川 和志

健康診断(法定健診)や人間ドックの検査項目の一つに、血液検査があります。しかし、同じ血液検査でも、法定健診と人間ドックでは、検査の種類や見つけられる病気は異なります。

ここでは、人間ドックの血液検査について、検査を通じてわかる病気のリスク、検査費用、結果の見方などについて解説していきます。

施設によって、検査方法、基準値、単位が異なることがありますのでご注意ください。

目次
  1. 働き盛りの30~40代に起こりうる病気のリスク
  2. 血液検査は病気のリスク発見に役立つ
  3. 目的別の検査項目と数値結果の見方
  4. 人間ドックで定期的に健康状態の把握を

働き盛りの30~40代に起こりうる病気のリスク

働き盛りの30~40代に起こりうる病気のリスク

30〜40代は高血圧や脂質異常症などの生活習慣病に気をつけた方がよい年齢です。この年代になると仕事中心の生活を送る方も多く、食事、運動や睡眠といった生活習慣が乱れがちです。

30〜40代の働き盛りの年代の人が注意すべき病気の例は、次の通りです。

  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 糖尿病
  • 心疾患(心筋梗塞、不整脈など)
  • 脳血管疾患(脳梗塞など)
  • 肝疾患(脂肪肝、肝炎など)
  • COPD(慢性閉塞性肺疾患)
  • がん など

これらの病気は、日々の生活習慣に大きく関わります。例えば、喫煙は心疾患や脳血管疾患の原因となる動脈硬化やCOPD、肺がんの発症原因にもなりえます。塩分や脂肪の多い食事、高カロリーの食事は高血圧や脂質異常症、糖尿病のリスクになることがあります。

若い頃から健康に好ましくない生活習慣を続けていると、30〜40代頃から徐々に「病気」としてその影響が現れてくるケースもあるのです。

自分では気がつかない病気の前兆やリスクを発見するのが、人間ドックの目的です。人間ドックの血液検査では、検査目的に応じて項目を選択することでさまざまな病気やそのリスクを調べることができます。

血液検査は病気のリスク発見に役立つ

血液検査結果イメージ

人間ドックの血液検査では、数多くの病気のリスクについて調べることができます。具体的には、肝臓の異常、腎臓の異常、貧血、脂質異常症、糖尿病などです。

冒頭で述べた通り、会社などで行われる健康診断でも血液検査はありますが、人間ドックのそれと比べると、検査項目が限られていることがほとんど。そのため、より詳しく病気のリスクを知りたい場合は、人間ドックの血液検査を選んだ方が賢明です。

なお、結果はおおよそ1〜2週間後にわかります(結果がわかるまでの期間は受診先の医療機関によって異なります)。

血液検査の費用は内容に応じて

血液検査の費用は、どの検査項目(後述)を入れるかによって大きく変動します。

例えば、血液検査単体では数千円のところもあれば、腫瘍マーカー検査などさまざまなオプションをつけると、数万円かかることも。自分が調べたい病気などを踏まえ、受診先と相談しながら、オプションとして追加する検査項目を決めると、納得いく費用で血液検査を受けられるでしょう。

検査前日の注意点

検査項目によっては食事制限(例:検査の〇時間前から食事をとってはいけないなど)がある場合があります。検査前の注意点については、あらかじめ受診先の医療機関に確認しましょう。

また、良い検査結果を得るために、検査前の数日間だけ食事に気を遣ったり運動したりする人がいますが、普段の生活習慣の上での健康状態を知るためにも普段通りの状態で検査を受けてください。一時的な対策で数値が良くなったとしても、本末転倒です。

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目的別の検査項目と数値結果の見方

血液検査は人間ドックの検査項目の一つですが、血液検査自体にも多くの項目があります(どの項目を測定するかは、調べたい病気によって異なります)。

それぞれ調べたい部位ごとに検査の項目と結果の見方(正常値、異常値)について見ていきましょう。

肝臓が気になる場合に検査したい項目

総タンパク:血液中の総タンパクの量

低値の場合に疑われる病気は、ネフローゼ症候群、栄養障害、がんなど、高値の場合に疑われる病気には、脱水、慢性炎症、多発性骨髄腫などがあります。

異常 要注意 基準範囲 要注意 異常
6.1以下 6.2〜6.4 6.5~7.9 8.0~8.3 8.4以上

※単位=g/dL

アルブミン:肝臓でつくられる血液タンパクの一つ

低値の場合に疑われる病気には、肝臓障害、ネフローゼ症候群、栄養障害(低栄養)などがあります。

基準範囲 要注意 異常
3.9以上 3.7~3.8 3.6以下

※単位=※単位=g/dL

AST(GOT)・ALT(GPT):肝臓に多く存在する酵素

高値の場合に疑われる病気に、急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝臓がん、アルコール性肝炎などがあり、AST(GOT)のみ高値の場合には心筋梗塞、筋肉疾患などが疑われます。

  基準範囲 要注意 異常
AST(GOT) 30以下 31~50 51以上
ALT(GPT) 30以下 31~50 51以上

※単位=U/L

γ-GTP:肝臓の解毒作用に関わる酵素

肝臓や胆道に異常があると、血液中の数値が高くなります。高値の場合に疑われる病気は、アルコール性肝障害、慢性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害があります。

基準範囲 要注意 異常
50以下 51~100 101以上

※単位=U/L

腎臓が気になる場合に検査したい項目

クレアチニン(Cr):アミノ酸の一つであるクレアチンの代謝後の老廃物

クレアチニン(Cr)は腎臓でろ過され、尿として排出されます。高値の場合に疑われる病気としては腎機能低下があります。

  基準範囲 要注意 異常
男性 1.00以下 1.01~1.29 1.30以上
女性 0.70以下 0.71~0.99 1.00以上

※単位=㎎/dL

eGFR:クレアチン値を性別と身長で補正して算出した指標

低値の場合に疑われる病気に、腎機能低下があります。

基準範囲 要注意 異常
60.0以上 45.0~59.9 44.9以下

※単位=mL/分/1.73㎡による。

尿酸(UA):細胞の核の成分でタンパク質のひとつのプリン体が代謝された後の老廃物

高値の場合に疑われる病気は高尿酸血症(尿路結石、痛風などに繋がる)、低値の場合に疑われる病気は腎性低尿酸血症などがあります。

要注意 基準範囲 要注意 異常
2.0以下 2.1~7.0 7.1~8.9 9.0以上

※単位=㎎/dL

脂質が気になる場合に検査したい項目

HDLコレステロール:血液中の悪玉コレステロールを回収

いわゆる「善玉コレステロール」と呼ばれるもので、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を回収する役割があります。低値の場合に疑われる病気に脂質異常症、動脈硬化があります。

基準範囲 要注意 異常
40~119(注) 35~39 34以下

※単位=㎎/dL
注:将来、脳・心血管疾患が発症する可能性を考慮した基準範囲

LDLコレステロール:

こちらは、いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれるもので、全身の組織・細胞はこの悪玉コレステロールからコレステロールを取り込みます。悪玉コレステロールが血管壁に入り込むことで、動脈硬化の原因となるため、この数値が高い場合には注意が必要です。

逆に低値の場合に疑われる病気には栄養障害(低栄養)、甲状腺機能亢進などがあります。

要注意 基準範囲 要注意 異常
59以下 60~119(注) 120~179 180以上

※単位=㎎/dL
注:将来、脳・心血管疾患が発症する可能性を考慮した基準範囲

中性脂肪(TG/トリグリセリド):体内で最も多い脂肪

中性脂肪は体内脂肪の一種で、体内で最も多い脂肪です。高値の場合に疑われる病気に動脈硬化、低値の場合に疑われる病気に低βリポタンパク血症、栄養障害(低栄養)があります。

要注意 基準範囲 要注意 異常
29以下 30~149(注) 150~499 500以上

※単位=㎎/dL
注:将来、脳・心血管疾患が発症する可能性を考慮した基準範囲

Non-HDLコレステロール:全ての動脈硬化を引き起こすコレステロールの値

総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いた値で、全ての動脈硬化を引き起こすコレステロールの値です。

高値の場合に疑われる病気は動脈硬化、脂質異常症、甲状腺機能低下、家族制高コレステロール血症など、低値の場合に疑われる病気は栄養吸収障害、低βリポタンパク血症、肝硬変などがあります。

異常 基準範囲 要注意 異常
89以下 90~149(注) 150~209 210以上

※単位=㎎/dL
注:将来、脳・心血管疾患が発症する可能性を考慮した基準範囲

糖尿病が気になる場合に検査したい項目

血糖値(FPG):ブドウ糖の血中濃度のこと

高値の場合に疑われる病気に糖尿病、膵臓癌、ホルモン異常があります。

基準範囲 要注意 異常
99以下 100-125 126以上

※単位=㎎/dL

HbA1c:糖化ヘモグロビンの割合を表したもの

HbA1C(ヘモグロビン・エーワン・シー)は、糖化ヘモグロビン(糖と結合したヘモグロビン)がどれくらいの割合で存在しているかをパーセントで表したものです。空腹時血糖(FPG)が126mg/dL以上かつHbA1c6.5%以上なら糖尿病と判断されます。

ただし糖尿病の方でも、貧血を認める場合には、HbA1cが低値となる場合もあるので、医師に判断を求めましょう。

基準範囲 要注意 異常
5.5以下 5.6~6.4 6.5以上

※単位=%

貧血などが気になる場合に検査したい項目

赤血球数(RBC):不要な二酸化炭素を回収

赤血球は酸素を全身に運んで不要な二酸化炭素を回収する役割があります。

高値の場合は多血症、低値の場合には貧血が疑われます。

  基準範囲
男性 438~577万
女性 376~516万

※単位=μL

血色素(Hb/ヘモグロビン):酸素を運ぶタンパク質の一つ

血色素は赤血球に含まれ、酸素を運んでいるタンパク質の一つです。高値の場合に疑われる病気は多血症、低値の場合に疑われる病気には鉄欠乏性貧血などがあります。

  異常 要注意 基準範囲 要注意 異常
男性 12.0以下 12.1-13.0 13.1-16.3 16.4-18.0 18.1以上
女性 11.0以下 11.1-12.0 12.1-14.5 14.6-16.0 16.1以上

※単位=g/dL

ヘマトクリット(Ht):血液中の赤血球の割合

高値の場合に疑われる病気は多血症、脱水など、低値の場合に疑われる病気は鉄欠乏性貧血などがあります

  基準範囲
男性 40.4〜51.9
女性 34.3〜45.2

※単位=%

白血球数(WBC):病原菌などから身体を守る細胞

白血球は、病原菌などから身体を守っている細胞です。喫煙している人は値が高くなる傾向があります。

高値の場合に疑われる病気には細菌感染症、炎症、腫瘍、低値の場合に疑われる病気にはウイルス感染症、再生不良性貧血などが考えられます。

数値が高い場合は細菌感染症にかかっているか、炎症、腫瘍の存在が疑われますが、どこに炎症が起きているかまでは血液検査だけではわからないため、他の検査も組み合わせてより詳細に調べる必要があります。

異常 基準範囲 要注意 異常
3.0以下 3.1~8.4 8.5~9.9 10.0以上

※単位=103/μL

血小板数(PLT):出血時に出血を止める細胞

高値の場合に疑われる病気に鉄欠乏性貧血や血小板血症、低値の場合に疑われる病気に再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、肝硬変などがあります。

異常 要注意 基準範囲 要注意 異常
9.9以下 10.0~14.4 14.5~32.9 33.0~39.9 40.0以上

※単位=104/μL

感染症が気になる場合に検査したい項目

CRP:炎症が起きた際に増えるタンパク質

体内に炎症が起きた際に増えるタンパク質のことを、CRPといいます。通常は体内にわずかしか存在しないため、この値が高くなった場合、身体のどこかに炎症があると考えられます。

高値の場合は細菌やウイルス感染、がんなどの疑いがあります。

基準範囲 要注意 異常
0.30以下 0.31~0.99 1.00以上

※単位=㎎/dL

人間ドックで定期的に健康状態の把握を

人間ドックでは、一度に全身の病気のリスクを知ることができます。今回紹介した血液検査の他にもさまざまな検査を組み合わせることができ、健康診断(法定健診)よりも多角的に病気や異常がないかどうか調べられる点は、人間ドックのメリットといえるでしょう。

特に働き盛りの年代で、生活習慣の乱れを自覚している人は、ぜひ一度、人間ドックの受診を検討してみましょう。

そして、これを機に「人間ドックを受けてみようかな」と少しでも動機づいたのであれば、以下の人間ドック受診レポートも併せてご覧ください。

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