40代・50代 夫婦

人間ドック

40〜50代にとっての人間ドック|受診すべき検査項目や費用、頻度とは?

日野市立病院 菊永 裕行 医師

この記事の監修ドクター

日野市立病院 副院長
菊永 裕行

【略歴】
1983年 久留米大学医学部 卒業

【資格等】
日本外科学会認定 外科専門医
慶應義塾大学客員准教授

平均寿命が40歳代だった明治時代から環境が整備されて医療が進化したことにより、平均寿命は男女ともに80歳を突破しました。一方、健康寿命は70歳程度です。

この差は、「介護によって生きる時間」で生まれています。医師は、治せる病気であれば対応しますが、健康維持については、個人の努力と社会のコミュニティに頼るしかありません。特に、個人が健康のためにすべきことについて医療は無関心であり、無力です。

今回は、健康寿命を20~30年後に控えた40代・50代が健康のために何ができるのか、そして人間ドックをどう活用していくのかということを、取り上げます。

※厚生労働省「健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料」で「人生の中で健康で障害の無い期間」と記述されている寿命の考え方。同資料では、「痴呆や寝たきりにならない状態で生活できる期間」とも記述されています。

目次
  1. 40代・50代のあなたが健康に関してやるべきこととは?
  2. 人間ドックは1回、数万円。もし、がんを発症すれば、年間212万円かかる
  3. 定期的な受診が必要な世代に突入
  4. 法定健診(定期健康診断)を受診していれば、サラリーマンに人間ドックは不要?
  5. 法定健診(定期健康診断)・特定健診(特定健康診査)と人間ドックの検査項目の違い
  6. 人間ドックで40代・50代が注目すべき検査項目と、対象になる疾患リスク
  7. スタンダードな人間ドックの費用と、受診のタイミング
  8. 3大疾患が気になるのであれば、追加受診を検討してもよい検査項目とは?
  9. まとめ:重篤な疾患の発症に現実味が出てくる年齢層が40代・50代

40代・50代のあなたが健康に関してやるべきこととは?

40代・50代の方が健康のためにすべきことは、大きく分けて、次の4つです。

  1. 規則正しい生活
  2. バランスの良い食事
  3. 適切な運動
  4. 健診

1と2は、40代・50代が最も苦手な分野です。3の「運動」を怠ってしまうと大腿四頭筋から萎縮が始まり、「要介護」になる率が高くなります。さらに、4の「健診」で病気を見逃してしまい簡単な治療で済まなくなると、社会から離脱し、苦しまなければなりません。

1から3までの全てを実践して健康体をつくり上げ、さらに4の「健診」でその健康体を確認しながら維持することが、40代・50代には求められるのです。

30代までは、身体の状態を顧みず働き詰めで仕事や遊びに没頭できました。それでも何とかなる年齢でしたが、40代を過ぎると筋肉量が減少し筋力が低下し始めると同時に、身体能力が徐々に下降していきます。それは肝臓・膵臓・心・肺などを含む内臓機能も落ち始めるということであるため、仕事量や仕事の内容を考慮しなければなりません。また、生活態度もあらためざるを得ない時期であるともいえます。

例えば、糖尿病などの生活習慣病をはじめ、何らかの疾患を発症すれば、仕事に穴が空き、経済面にもダメージを与えます。また、家族に負担をかけることもあります。がん・心臓病・脳卒中といった重篤(じゅうとく)な疾患を発症すれば、その影響は、計り知れません。

次の章では、40代・50代に向けて、がんが発症した際の経済的損失を計算したデータを参照にしながら、人間ドックを受けることによるメリットについて、解説していきます。

人間ドックは1回、数万円。もし、がんを発症すれば、年間212万円かかる

がん・心臓病・脳卒中に罹患(りかん)した場合、1年間にどれほどの医療費が必要となるのか、そのことを示すデータを挙げてみます。

これは、厚生労働省が2016年9月に発表した『国民医療費の概況2014』と、2015年12月に発表した『患者調査の概況2014』から算出したものです。

がん・心臓病・脳卒中 統計グラフ

がんなら年間212万円、心臓病なら年間105万円、脳卒中なら年間151万円がかかるという結果です。この金額と比べれば、数万円から高くても十数万円の受診費用ですむ人間ドックを受診し、疾患を予防する方が、経済的には損失が少ないということになります。

つまり、発症して進行したがんを医療機関で検査し、長期に入院治療するよりも、人間ドックで早期発見して内視鏡治療などの短期入院で簡単に治療する方が、身体的にも経済的にも有利なのです。

ひとたび疾患を発症すれば社会的な影響=損失につながる40代・50代にとって、受診は“たしなみ”といっても過言ではないかもしれません。

定期的な受診が必要な世代に突入

健康面で問題がない場合、人間ドックの受診の必要性を感じていない方が多いでしょう。また、いざ受診しようとしても、イメージが湧かない人もいるかもしれません。

そもそも、40代・50代はたとえ自覚症状がなくても、飲酒・喫煙・暴飲暴食などといったそれまでの生活習慣の“ゆがみ”が、健康面で悪影響となって現れ始める世代です。前述したように、筋肉量も30代以降は減少し始め、肉体的能力の限界も低下してきます。不摂生の“ツケ”が回ってくる時期とも重なり、精神的にも自信を失っていくのです。

厚生労働省が2019年3月に発表した「患者調査の概況2017」のデータをご紹介します。3大疾病とされる「悪性新生物(がん)」「心臓病」「脳血管疾患(脳卒中)」のいずれも、40代・50代になると発症数が増加していく傾向があります。

年代別・疾患別 患者数統計:厚生労働省が2019年3月に発表した「患者調査の概況2017」より

3大疾病とされる「悪性新生物(がん)」「心臓病」「脳血管疾患(脳卒中)」のいずれも、40代・50代になると、発症数が増加して行く傾向があります。

したがって、40代・50代にとっての『健康の自己管理』とは、自覚症状がなくとも進行しているかもしれない疾患リスクを把握することです。そのために健診が必要です。

どの健診を受診するかを迷ったら、あなたのためにオーダーメイド化した「人間ドック」を利用しましょう!人間ドックは、施設コンシェルジュが個人に対して、その年に必要に応じたオーダーでドック項目を選択します。

法定健診(定期健康診断)を受診していれば、サラリーマンに人間ドックは不要?

会社勤めの人であれば、法定健診(定期健康診断)や特定健診(特定健康診査)を定期的に受けている場合が多いでしょう。そうした人は、あえて人間ドック受診の必要を感じないかもしれません。しかし、同じ健診といっても、法定健診(定期健康診断)・特定健診(特定健康診査)と人間ドックには大きな違いがあります。

法定健診(定期健康診断)・特定健診(特定健康診査)は、その多くが公費を使ってたくさんの方が受診するため、限られた検査項目しか行えません。

法定健診(定期健康診断)・特定健診(特定健康診査)と人間ドックの検査項目の違い

会社などで定期的に受診する法定健診(定期健康診断)や別名「メタボ健診」といわれる特定健診(特定健康診査)は、身近な健診です。また、基本的に人間ドックのスタンダードなコースの検査項目と共通しています。

ただ、その内容の広さと深さは実は大きく違います。

法定健診/特定健診/人間ドックの検査項目比較の一例
法定健診 特定健診 人間ドック(オプションは除く)
身長、体重、腹囲、視力、聴力 身長、体重、BMI、腹囲 身長、体重、肥満度、BMI、腹囲、視力、聴力
血圧測定 血圧測定、眼底検査 血圧測定、眼底検査、眼圧検査、呼吸機能検査
胸部X線検査、喀痰検査   胸部X線検査、腹部超音波検査(エコー検査)、上部消化管X線検査(胃バリウム)または上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
安静時心電図検査 安静時心電図検査 安静時心電図検査、心拍数
血色素、赤血球、GOT、GPT、γ-GTP(血液検査) 血色素、赤血球、ヘマトクリット、GOT、GPT、γ-GTP(血液検査) 血色素、赤血球、ヘマトクリット、血小板、MCV、MCH、MCHC、
GOT、GPT、γ-GTP、総ビリルビン、ALP(血液検査)
HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(血液検査) HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪(血液検査) HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、総コレステロール(血液検査)
血糖(血液検査) 空腹時血糖 または HbA1c(血液検査) 空腹時血糖、HbA1c、総たんぱく、グルブミン、クレアチニン、尿酸(血液検査)
尿糖、たんぱく(尿検査)   尿酸、尿糖、たんぱく、PH、沈渣、潜血、比重(尿検査)
    便潜血反応検査(2日法)

※受診者の年齢などに基づいて医師の判断で省略できる項目
★一定の基準のもと、医師が必要と認めた場合に実施

具体例でいえば、人間ドックには「胃の検査」が必ずあります。いわゆる、「胃バリウム」や「胃カメラ」と呼ばれる検査です。専門用語では胃バリウムは「上部消化管X線検査」、胃カメラは「上部消化管内視鏡検査」と呼ばれ、法定健診(定期健康診断)にはない検査項目です。

胃バリウムは、食道と胃・十二指腸をチェックします。食道がん・胃がん・十二指腸潰瘍などの発見が目的です。一方、胃カメラは逆流性食道炎やがんの早期発見が目的です。

世界で見ても死亡原因のトップはがんですが、日本では胃がんが最も罹患数(新たにがんと診断されること)が多いのが特徴です。胃をはじめとする消化器は、健康面の自覚症状がない40代・50代にとって、特にチェックしておかなければなりません。

また、肝臓・胆のう・すい臓などを調べる腹部超音波検査(エコー検査)も法定健診(定期健康診断)にはないため、人間ドックでの対応となります(何らかの病変が疑われれば、造影CTやMRIなどの精密検査のオプションを追加することも可能です)。

血液検査では、腫瘍マーカー検査以外に糖尿病のチェックが必要です。空腹時血糖とHbA1cを検査しておきましょう。なぜなら、急激に進行した糖尿病にはすい臓がんの可能性が隠れているからです。

人間ドックで40代・50代が注目すべき検査項目と、対象になる疾患リスク

40代・50代の人が、特別にがんや重症疾患に罹患しやすい、というわけではありません。しかし、がんや糖尿病は生活習慣病です。

飲酒・喫煙・暴飲暴食は「糖尿病」「胃がん」「大腸がん」「肝臓がん」の発がんリスクであることが知られており、また過度の飲酒は「アルコール性肝障害」などの肝臓疾患や「急性・慢性膵炎」などのすい臓の病気の危険因子であることは確実だからです。

40代・50代が注意すべき疾患と人間ドック検査項目
疾患名 検査項目
糖尿病 空腹時血糖、HbA1c(血液検査)
肝臓疾患(肝炎、脂肪肝、肝硬変、アルコール性肝障害など) γ-GTP、総ビリルビン、ALP(血液検査)
胃がん、食道がん、十二指腸潰瘍、胃炎、胃潰瘍、胃ポリープ 上部消化管X線検査(胃バリウム) または 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎 便潜血反応検査(2日法)
肝臓がん、すい臓がん、胆のう結石 腹部超音波検査(肝臓、胆のう、すい臓、ひ臓、腎臓の5臓器を検査)

これらの要因が、実際に健康に及ぼしかねないほど危険な水準に達しているかどうかを医学的に確かめたいときは、法定健診(定期健康診断)だけではなく、人間ドックを受診する必要があります。

スタンダードな人間ドックの費用と、受診のタイミング

今回ご紹介した人間ドックのスタンダードな検査コースでも、幅広く疾患リスクを調べることができます。

一般的な受診費用は2~4万円(CT検査やMRI検査などのオプションを除くで、検査時間も1時間ほどです。通常は数週間後に検査結果が届きますが、医師から直接結果を聞くことができ、生活指導も受けられる良心的な施設もあります。

年間の医療費が数百万円にも達する進行がん・心臓病・脳卒中を発症してから受診するようでは、遅いのです。2~4万円の受診費用がかかるとしても、受診者個人の生活の質(QOL)向上はもちろん、あなた自身そして家族の幸福、仕事を含む社会活動維持のためにも、定期的に人間ドックで健康を確認し、身体異常の早期発見に努め、身体を酷使することなく健康維持に取り組んでいくことが大切です。

働き盛りであり、がん・心臓病・脳卒中が発症する世代に差し掛かる40代・50代であるからこそ、年に1度の人間ドック受診はメリットが多いと考えます。

3大疾患が気になるのであれば、追加受診を検討してもよい検査項目とは?

人間ドックの他の特徴は、スタンダードな検査コースに加え、オプションとして多様な検査項目が設定されていることです。ここでは、「全身を徹底的に検査してほしい」「心臓や脳など特定の部位を検査してほしい」という希望がある人に向けた代表的なオプション例を挙げてみましょう。

マンモグラフィ(乳房X線検査)

X線を用いて、腫瘤(しゅりゅう)の陰影やがんによる微小な石灰化などの乳房内病変を調べる検査です。病変がある場合、良性か悪性かの判断の指針となります。乳腺超音波検査とともに、「乳がん検診」の検査として用いられています。

HCV抗体検査

C型肝炎ウイルスの抗体を検出する検査です。陰性の場合、現在はC型肝炎ウイルスに感染している可能性は低いことを意味します。陽性の場合は感染の可能性があり、継続してHCV抗体価を測定します。

PET-CT検査

ほぼ全身のがんまたは炎症をスクリーニングする検査です。受診費用は10万円ほどかかります(自己負担)。がん細胞や炎症細胞が正常細胞より代謝が進行していることを利用し、ブドウ糖同位元素を多量に取り込んだ部位を撮影・同定します。これにより、すい臓や肺など、症状の出にくい「隠れた臓器といわれる」部位の探索に効果を発揮します。ただし、直径が10mm以下の腫瘤は同定不能なことが多いので、早期発見には不向きであるかもしれません。

心臓MRI検査/運動負荷心電図

心臓病リスクを調べます。受診費用は4~5万円ほどです。「心臓ドック」の名称で提供されている施設もあります。

頭部MRI検査/頭部MRA検査

脳卒中の発症リスクを調べます。受診費用は1~2万円ほどです。「脳ドック」などの名称で提供されています。

まとめ:重篤な疾患の発症に現実味が出てくる年齢層が40代・50代

40代・50代は、社会的に引退して余生を過ごすには早過ぎる年齢層です。症状が現れた時点で手遅れになる疾患もあるため、重篤な疾患に至る前に早期発見を心がけ、早く治して社会に復帰しましょう。

働き盛りの年齢、会社員、公務員、事業主、主婦のあなたが、家族に心配をかけることはもとより、万が一、寝たきりにでもなれば、自分自身への負担は大きなものです。

ぜひ、年に1度、人間ドックを受診する習慣を確立し、毎年健康を確認して、健全な肉体で社会生活を営んでください。そして食事、運動、疾病予防対策を万全にすることで、より良いワークライフバランスを実現していきましょう。

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