がん検診
人間ドックで受診するがん検診|検査内容、メリット、費用とは
現代社会では「日本人の2人に1人はがんになる」と言われています。死亡数が多いがんは、肺がん、大腸がん、胃がんで、女性の乳がんや子宮頸がんも年々発症が若年化傾向にあります。ある程度進行するまで自覚症状が現れないため気がつきにくく、しかし症状が出てからでは遅く命を落とすケースも珍しくありません。早期発見が非常に重要となるがんについて、検診内容や検査を受けることのメリットデメリットなどを紹介します。
がん検診には「任意型検診」と「対策型検診」がある
がん検診には「任意型検診」と「対策型検診」という2つの検診があるのをご存知でしょうか。「任意型検診」とは、受診者が費用を全額自己負担し、医療機関が任意で提供する医療サービスを受けるものです。「任意型検診」では、人間ドックが代表的な検診例と言えるでしょう。もう一方の「対策型検診」は、受診者の費用負担は少額か無料のことが多いですが、がんによる死亡リスクを減少させるという目的のもとに、公的な予防対策として「決められた検査方法」で行われる検診です。自治体で実施しているがん検診などが、この「対策型検診」にあたります。
「対策型検診」では国が有用であると認めた検査方法でのみ検診を実施するのに対し、「任意型検診」は、自分が受けたい検査方法を自由に組み合わせて受診することができます。
今回は「任意型検診」の代表として「人間ドック」に関する説明をしていきましょう。
人間ドックにおけるがん検診のメリット・デメリット
メリット:がんの早期発見につながること
人間ドックは「これから発症かもしれない疾患を防ぐため」に受診する予防検診です。病気を未然に防ぐことが最大の目的なので、検査を受けることでがんリスクの早期発見につながるというメリットがあります。また、定期的に人間ドックを受診していれば、たとえがんが発見されたとしても、早い段階で治療へと移行することができ、転移するような大きながんへと進行してしまう前に対処することも可能です。
デメリット:偽陰性・偽陽性・過剰診断になりかねないこと
ただし、人間ドックで行う検査も100%ではありません。がんの場所や形によっては発見しにくく見逃してしまう可能性はあります(偽陰性)。
また、検査を受けて「陽性」の判断が出たものの、再検査をしたら何も異常がなかったということもあります(偽陽性)。がんの疑いをかけられ、はっきりしたことがわかるまでには心理的な負担をかけてしまうため、受診者に辛い思いをさせてしまうというケースです。
ほかに、過剰診断といって、命の危険がない無害ながんを発見することも。「害がないのだから問題ない」と捉える方もいれば、そのせいで心労がかかってしまう方もいるため、過剰診断では「見つけすぎること」がデメリットになるのです。
見逃しを防ぐためには多角的な検査を定期的に受けることが重要
初期がんなどを見逃してしまう偽陰性については、どのような検診でも起こり得ることではあります。見逃しを防ぐには複数の異なる検査で多角的に健康状態をチェックすること、そして定期的に検査を受けることで、大きく進行しないうちに、改めて異常に気がつけるようにすることです。
偽陽性や過剰診断では受診者に心的負担をかけるところが大きいですが、結果的には健康であり、その健康を今後も維持するためのモチベーションにつながることは収穫とも考えられます。
自治体で実施しているがん検診では、通常年に一度、決まった検査方法でしかがんリスクをチェックすることができません。人間ドックのがん検診では複数の異なる検査で、多角的な判断ができるように項目設定されているほか、気になる症状に合わせて検査を追加できるなど、徹底的にがんリスクを調べたい方にはお勧めです。
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がん検診の検査内容
自治体で行なっているがん検診は無料で受けられたり、受診者の費用負担が少ないため、検診を受けやすい配慮があります。ただ、年齢によって検査内容が変わってしまうため、本当にがんリスクがないのかどうかへの不安が残る方もいらっしゃいます。
人間ドックは20歳から受診ができ、さらに検査項目を自由に組み合わせられるという任意型検診ならではの特徴があります。がん検診には、「胃がん検診」「大腸がん検査」「肺がん検査」など部位ごとに検査が設定され、方法も一つではないため複数の検査を受けて早期発見の確度を高めるのも良いでしょう。全身のがんリスクを一度にチェックしたい場合には「PET検査」という方法もあります。
(※PET検査について詳しく知りたい方は別記事「PET検査の検査内容や費用について|メリットや受診できる施設を解説」を参照してください。)
自治体の検診だけでなく人間ドックも視野に入れることでがんリスクを予防しながら、これからの健康を考えていきましょう。
胃がん検診
胃がん検診では、国の方針として、問診、胃X線検査または胃内視鏡検査が勧められています。人間ドックではABC検査などの血液検査も胃がんリスクを発見するために有用性があるとされ、検査項目の一つに設定している医療機関もあります。日本人の罹患(りかん)数が多い胃がんリスクを早期発見する目的で行われるのが胃がん検診です。
検査内容 | 検査費用(※1) | 検査時間(※2) | 検査結果 |
---|---|---|---|
胃X線検査(バリウム) | 1万~1.5万円前後 | 10分程度 | 当日もしくは、後日の医師による説明。当日の説明がない場合、検査結果後日郵送。 バリウム検査で問題が見つかった場合は内視鏡にて再検査。 |
胃内視鏡検査(胃カメラ) | 約1~2万円前後 | 10~15分程度(鎮静剤を使用した場合はさらに15~20分前後休憩) | 当日その場で診断することが多い。当日説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
大腸がん検査
大腸がん検査は便潜血検査、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)、腫瘍マーカー(血液検査)などで大腸がんリスクを調べます。便潜血検査はいゆわる検便です。任意型検診・対策型検診のいずれでも、大腸がん検査では便潜血検査を行うことが多いですが、問題が発見された場合には大腸内視鏡で再検査を行うため、はじめから人間ドックで重点的に調べておくという方法も取れます。
検査内容 | 検査費用(※1) | 検査時間(※2) | 検査結果 |
---|---|---|---|
便潜血検査 | 2千円前後 | 自宅で2日間検査が一般的 | 検査結果は後日郵送。 便潜血検査で異常があれば大腸内視鏡で再検査。 |
大腸内視鏡検査(大腸カメラ) | 2~3万円前後 | 15~30分程度(鎮静剤を使用した場合はさらに15~20分前後休憩) | 当日その場で診断することも多い。当日説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
腫瘍マーカー(血液検査) | がんの種類1つに対して2~3千円ほど | 10分程度 | 検査結果は後日郵送。 |
肺がん検査
肺がん検査は胸部X線検査、胸部CT検査、喀痰細胞診、腫瘍マーカーなどを実施して肺がんをはじめとする肺気腫、肺炎などの気管支疾患を検査するものです。人間ドックで受ける場合「肺がんドック」としてコース化されていて、複数の検査を同時に受診することも多いです。受診が推奨される方のプロフィールでは、やはり日常的にタバコを吸う喫煙者の方に勧められます。
検査内容 | 検査費用(※1) | 検査時間(※2) | 検査結果 |
---|---|---|---|
喀痰細胞診 | 2千~4千円前後 | 自宅で3日分の痰を摂取をして検査 | 検査結果は後日郵送。 異常があれば胸部CT検査などで再検査。 |
胸部CT検査 | 1.5万~3万円前後 | 10分程度 | 当日もしくは、後日の医師による説明。当日の説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
乳がん検査
乳がん検査ではマンモグラフィ、乳房超音波検査(エコー)、PEM検査(乳房専用PET)などを実施することで乳がんをチェックします。マンモグラフィーが一般的ですが、乳腺が発達している20〜30歳台や妊娠中、授乳中の方は乳房超音波検査(エコー)での検査が推奨されます。近年では発症する年代が若年化してきている傾向もあるため、定期的な検査受診が勧められています。
検査内容 | 検査費用(※1) | 検査時間(※2) | 検査結果 |
---|---|---|---|
マンモグラフィ | 5千~1万円前後 | 10分程度 | 当日もしくは、後日の医師による説明。当日の説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
乳房超音波検査(エコー) | 5千~1万円前後 | 15分程度 | 当日もしくは、後日の医師による説明。当日の説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
PEM検査(乳房専用PET) | 10万円ほど | 1時間未満 | 当日もしくは、後日の医師による説明。当日の説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
子宮頸がん検査
子宮頸がん検査では主に細胞診、HPVといった検査を行います。細胞診は、子宮頸部の粘膜細胞を綿棒にこすり取り、がん細胞の有無や異形成(細胞の異常)がないかを顕微鏡で調べる検査です。HPV検査も同じように、子宮頸部の細胞を採取して子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染有無を調べます。早期に異常な細胞を発見できればがんへの進行を食い止めることができるので、定期的な検診が推奨されています。
検査内容 | 検査費用(※1) | 検査時間(※2) | 検査結果 |
---|---|---|---|
細胞診 | 3千~1万円前後 | 5~10分程度 | 検査結果は後日郵送。 |
HPV | 5千~1万円前後 | 5~10分程度 | 検査結果は後日郵送。 |
経膣超音波検査(エコー) | 5千~1万円前後 | 15~20分程度 | 当日もしくは、後日の医師による説明。当日の説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
子宮体がん検査
子宮体がん検査も子宮頸がん検査と同じで、主に細胞診で検査を行います。子宮内膜細胞を綿棒にこすり取り、がん細胞の有無や異常がないかを顕微鏡で調べます。検査方法には、経膣超音波検査(エコー)という手段もありますが、初期がんの検出・発見には、細胞診で行われることが多いようです。
検査内容 | 検査費用(※1) | 検査時間(※2) | 検査結果 |
---|---|---|---|
細胞診 | 3千~1万円前後 | 5~10分程度 | 検査結果は後日郵送。 |
経膣超音波検査 (エコー) |
5千~1万円前後 | 15~20分程度 | 当日もしくは、後日の医師による説明。当日の説明がない場合、検査結果後日郵送。 |
(※1) 検査費用は全て保険適用外時の参考価格
(※2) 検査時間は検査のみにかかる時間で記載(着替えの時間は含みません)
まとめ:がん検査の内容を知って必要な検査を受診しましょう
人間ドックで受診するがん検査にはデメリットもありますが、複数の異なる検査方法で多角的なチェックができることは疾患の見逃し防止にも役立ちます。また、各種がん検査の内容について詳しく知れば、今の自分に必要な検査・検診も見えてくるのではないでしょうか。
定期的な人間ドックの受診で、がんリスクの早期発見につなげ、健康を維持していきましょう。