がん検診

乳腺症から乳がんになる? 診断時に知っておきたいポイント

乳房のしこりや痛みがあったとしても、乳がんでないことの方が多いです。しかし、心配になって乳腺科や婦人科を受診して「乳腺症」と診断されたら、「いずれ乳がんになるのかも」と不安に思う人が多いかもしれません。

この記事では、乳腺症と乳がんに関連があるのか解説します。

目次
  1. 乳腺症から乳がんになることはある?
  2. 乳腺症と乳がんの比較
  3. 乳腺症の診断
  4. 乳腺症の治療
  5. まとめ|乳がんの恐れも視野に入れ定期的に受診を心がけましょう

乳腺症から乳がんになることはある?

乳腺イメージ

初めて「乳腺症」と耳にすると、なんとなく「乳がん」をイメージする人がいるかもしれません。しかし、「乳腺症」は正常とは異なる状態に乳腺が変化している状態を指しており、基本的に乳腺症が乳がんへ変化することはありません。最近では、乳腺症は「病気」ではなく生理的変化の範囲として扱われることが多くなりました。乳腺症には卵巣から出る2種類の女性ホルモンの量がアンバランスなことが関係しています。

具体的には、乳房のあちこちがごろごろと硬く、張っているような状態をいいます。ふつうは治療を必要としません。このような状態が乳がんのしこりを連想させてしまいますが、乳腺症は乳がんと関係ないと考えられています。

乳腺症と乳がんの比較

乳腺症と乳がんを比べてみましょう。

  【乳腺症】 【乳がん】
罹りやすい年齢 30〜50歳 40〜60歳
症状
  • 乳房の凸凹したしこり
  • 乳房の張りや痛み
  • 乳頭からの分泌物(乳頭の乳管開口部数個からの白色や黄色の分泌のことが多い)
  • 症状は月経前に強く月経が始まると弱まることが多い。
  • 初期は無症状
  • 乳房や腋の下のしこり
  • 乳頭からの分泌物(乳頭の乳管開口部ひとつからの血性分泌が多い)
  • 乳房の皮膚の変化(へこみやひきつれ)
  • 痛みが出ることは少ない

乳腺症と乳がんは罹患年齢も症状も似ています。年齢や症状だけから両者を区別することはできないので、自己判断せずきちんと検査を受けておくことが大切です。

乳腺症の診断

マンモグラフィ(乳房レントゲン検査)イメージ

乳がんと区別しにくい病気の代表格は乳腺線維腺腫(10歳代~40歳に多い良性のしこり)や乳腺炎(授乳中に多い乳腺の炎症)です。そして、「病気」というより「生理的変化」である乳腺症も乳がんと区別しにくいことがあります。マンモグラフィ(乳房レントゲン検査)や乳房超音波検査(エコー)などの画像診断を行う必要があります。

乳腺症は、のう胞(液体が入った袋)、乳管内乳頭腫(乳管の細胞が増えて分泌物が出る)、アポクリン化生(細胞が汗腺のように変化)など様々な状態を呈しますが、以下の所見が代表的です。

  • マンモグラフィーで白っぽく写る
  • 乳房超音波検査で白い部分と黒い部分がまだら状に見える
  • 乳房超音波検査で大小ののう胞が見える

乳腺症が乳がんに変わるわけではなく、乳腺症のある方が乳がんに罹りやすいわけでもありません。しかし、乳腺症の方にも乳腺症でない方にも乳がんができる可能性があります。

乳腺症があると乳がんの診断が難しくなることがありますので乳腺症と診断された方は忘れずに検診を受けましょう。

乳腺症の治療

乳腺症は原則経過観察のみで、治療の必要はありません。ただし、痛みなどの症状が強い場合に受診者が希望すれば対応できる医療機関もあります。女性ホルモンを抑える薬や鎮痛剤、漢方薬などが処方されます。大きなのう胞ができた場合は、検査も兼ねて中の液体を吸引することもあります。

まとめ|乳がんの恐れも視野に入れ定期的に受診を心がけましょう

乳房超音波検査(エコー)のイメージ

乳腺症が乳がんになるわけではありません。しかし、とくに乳腺症と診断された人や乳がんの家族歴がある人は、症状に変化がなくても定期的に検診を受け続け、乳房のわずかな変化を見逃さないことが大切です。

乳腺症の乳房では、触診でも画像診断でも乳がんは見つけにくいといわれています。人間ドックはもちろんのこと、乳がんや他の婦人系疾患の早期発見にも活用できるレディースドックなどを活用し、身体の総合的な健康管理を行っていきましょう。

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