がん検診

PEM検査とは|乳房専用PETの内容、他の乳がん検査との違い

仙台画像検診クリニック 院長 伊藤 正敏(医学博士)東北大学名誉教授

この記事の監修ドクター

仙台画像検診クリニック 院長
伊藤 正敏(医学博士)東北大学名誉教授

【略歴】
1972年 信州大学医学部 卒業
2007年 仙台画像検診クリニック 院長就任

乳がんは40代以降から発症リスクが高まります。マンモグラフィや超音波検査(エコー)で定期的に検診を受けていても、女性にとってリスクが心配な疾患のひとつでしょう。

これまで乳がん検診と言えばマンモグラフィかエコーが主流でしたが、近年は「PEM検査」という方法も選べるようになりました。この記事ではPEM検査がどんな検査なのか、詳しく解説します。

目次
  1. PEM検査とは|特長と検査の流れ
  2. PEM検査と他の乳がん検査との違い
  3. PEM検査を受けた方がいい人
  4. PEM検査の費用と検査を受けられる場所
  5. まとめ|乳がんリスクをくまなく調べたい人はPEM検査を

PEM検査とは|特長と検査の流れ

まだ深く浸透していない「PEM検査」とは

検査名を初めて耳にする人もいるかと思いますが、まだ深く浸透していない「PEM検査」とは何かを解説します。

PEMは乳房専用のPET検査装置

PEM検査とは「乳房専用」のPET検査装置を使った乳がん検査のことを指します。検査する対象部位が乳房に特化しており、乳がんの早期発見に有用とされています。

従来の乳がん検査といえば、マンモグラフィと超音波検査(エコー)が主流でしたが、検査で見つかるしこりが良性か悪性の判断には、熟練を要し、精密検査(針生検)の頻度が高くなります。その点でPET検査は、がん細胞で亢進している糖代謝を指標として良性か悪性か(正確には、細胞の活動レベル)を推測することができるため、新しい乳癌診断指標としてPEMを導入する医療機関も増えてきています。

乳がんの早期発見と乳腺内拡がり診断に寄与

PEM検査で使用する装置は、乳がんの早期発見に特化して改良されているため、通常のPET検査で対応できる10㎜の病変よりもさらに小さい、「触ってもわからない4㎜ほど」の病変に対応することができます。細胞の糖代謝の性質を利用した検査なので、高濃度乳腺(デンスブレスト)の人や月経による影響を気にすることなく検査を受けられることが特長です。

PEM検査の流れ

検査の原理はPET検査と同じですが、PEM検査では「乳房のみ」を調べます。

  1. 問診後、検査薬剤(FDG)を注射
  2. 薬剤が行き渡るよう安静にする(医療機関によっては排尿)
  3. PET/CT室で全身撮影(乳癌検診では、省略も可能)
  4. 検査室でPEM撮影
  5. 体内のFDGを減衰させるため再度リカバリールームなどで安静にする

検査装置には、乳房を平板の検出器ではさむ「対向型」と、うつぶせで検出器の中に乳房を下垂させる「リング型」の2種類あります。

対向型はマンモグラフィのように乳房をはさんで検査を行いますが、乳房の圧迫はマンモグラフィの半分以下なので、検査による痛みは、ほとんどありません。

リング型は検査装置の上にうつ伏せになり、乳房を片方ずつ装置のリングに入れて検査します。圧迫せずに行う検査となるので乳房の痛みは少ないですが、リングの縁で多少の痛みがあることがあります。

PEM検査と他の乳がん検査との違い

PEM検査と他の乳がん検査との違い

一般的に乳がんの検査として知られている「マンモグラフィ」や「超音波検査(エコー)」と、PEM検査との違いはどういう点なのでしょうか。以下に解説していきます。

PEM検査でわかること

PEM検査は初期乳がんの早期発見に有用な検査です。通常の乳がん検査はもちろん、乳がんの中でもマンモグラフィやエコーで見つかりにくい、「非浸潤性」の乳がんの判別も得意としています。また、乳がん手術前のがんの乳腺内拡がり検査や手術後の再発検査など乳癌診療において効用を発揮します。

PEM検査のメリットとデメリット

詳細に乳がんの検査ができること以外にも特長的なこと、メリット・デメリットとしては以下のとおりです。

メリット
  • マンモグラフィよりも痛みが少ないことで、精神的なストレスも緩和される。
  • 月経周期を気にする必要がないため、検査時期の都合がつけやすい。
  • 豊胸手術などでマンモグラフィ検査が受けられない人にも対応可能。
デメリット
  • 検査で服用する「FDG」はブドウ糖と放射性物質を結びつけた薬剤のため、妊娠中の人は受診不可。
  • 日本ではまだ導入している医療機関が少ない。
  • マンモグラフィやエコーに比べて検査費用が高く、気軽には受診しにくい。

マンモグラフィとエコー検査の違い

マンモグラフィは、乳房に脂肪が多いほど黒っぽく写り、乳腺組織が多いと白っぽく写るという性質があります。この時に問題となるのはしこりも同様に白く写ってしまうので、乳腺組織が多いと乳がんが見分けにくい点です。

そこで、マンモグラフィとは組織コントラストの高いエコーを併用することで、がん細胞の見落としを防ぐのが良いといわれます。特に高濃度乳腺の人はどちら一方の検査だけでは、乳がんを見落とす恐れがあるため、複数の検査を併用して受けることを推奨されます。

しかし、同じ画像検査でもPEM検査がこの2つの検査方法と異なるのは、がん細胞の特性を活かし検査前に腫瘍にマークをつけて(検査薬剤を取り込ませて)から撮影を行う点です。画像を撮った段階で、すでに気になるしこりが良性か悪性かの推定ができるため、早期に乳がん治療へと繋げることができます。

PEM検査を受けた方がいい人

より小さながん細胞にも対応しているので、とにかく乳がんリスクの不安をなくしたい人におすすめです。また、高濃度乳腺と言われたことがある人、豊胸手術を受けた方も、マンモグラフィやエコーとは異なる方法で受ける乳房検査なので、受診しておくことで安心感は高まります。

また、家族や親族で乳がんになったことがある人がいる場合も、安全のため、検査を受けておくことをおすすめします。

PEM検査の費用と検査を受けられる場所

PEM検査の費用は、PET/CT検査を含めて10万円ほど

PEM検査を受けてみたいけれど、受診前に気になるのは検査費用です。保険は適用されるのか、どこで受診ができるかについて解説します。

検査の費用・保険適用の有無

自費診療の場合、費用は、PET/CT検査を含めて10万円ほどです。人間ドックや検診など予防として受診するのであれば、保険は適用外のため実費となります。

保険が適用されるのは、すでに何かしらの症状が現れていたり、術後のフォローなど治療として検査を受ける場合です。その場合、保険費用は、4万円ですが、PET/CT検査後にPEM検査を受けることになっています。費用負担は1割~3割となります。
受診する医療機関によって費用が異なるので、受診したい検査内容がどのくらいの金額なのか、事前に確認しておくと良いでしょう。

検査を受けられる場所と探し方

PEM検査はまだ広く普及していない検査なので、検査装置を導入している医療機関も限られています。受診したい場合、まずは検査を行なっている医療機関を探す必要があります。リサーチにはインターネットが手早く、中でも検診予約サイトなら、PEM検査を実施している医療機関も見つかりやすくおすすめです。

まとめ|乳がんリスクをくまなく調べたい人はPEM検査を

乳がんリスクを徹底的に調べたい場合にはPEM検査がおすすめ。リサーチにはインターネットの利用を

40歳以降からのリスクが高まる乳がんはマンモグラフィとエコーを併用して受診することがすすめられます。一方で、どちらの検査でも乳がんが発見されにくい体質の人もいるため、乳がんリスクを徹底的に調べたい場合にはPEM検査がおすすめです。

受診できる医療機関が少なく費用も高いですが、PEMは一回の検査でより詳細な診断結果が出るので、病気に対する不安が解消されやすい検査だと言えるでしょう。

乳房専用PETが受けられる医療機関を探す