口腔癌の検査とは|セルフチェックと検査の流れ

がん検診

口腔癌の検査とは|セルフチェックと検査の流れ

ファミリークリニックひきふね 梅舟 仰胤 院長

この記事の監修ドクター

ファミリークリニックひきふね 院長
梅舟 仰胤

【略歴】
2017年 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了
2017年 ファミリークリニックひきふね 院長就任
【資格】
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本内科学会認定 総合内科専門医

口内炎など口の中のトラブルがなかなか治らず、やきもきした経験は少なからずあると思います。近年は有名人にも口腔癌が発見されたことで、治らない口内炎があると「もしかしたら自分も……」と不安になることがあるかもしれません。

口腔癌は他の病気との見分けがつきにくい癌です。進行してしまうと、手術をしてもその後の生活に影響を及ぼすことがあります。早期発見が何より重要となる口腔癌について、その見分け方や検査の流れを詳しく解説します。

目次
  1. 口腔癌の見分け方・セルフチェックの方法
  2. 口腔癌の検査とは
  3. 人間ドックを活用し年1回は口腔癌検診を受けよう
  4. まとめ|口腔癌は定期的な検診とセルフチェックで自己管理をしっかりと

口腔癌の見分け方・セルフチェックの方法

見た目は口内炎に似ている口腔癌の見分け方・セルフチェックの方法

発見したころにはすでに進行している恐れもある口腔癌は、なぜ気づきにくいのでしょうか。

見た目は口内炎に似ている

口内の癌が「気がつきにくい」と言われるのは、その見た目が口内炎やその他の潰瘍に似ているからと言われます。また、口腔癌の初期は痛みが少ないため、「そのうち治るだろう」と思っている間に病気が進行してしまうようです。

胃や肺など体の中の癌と比べ、肉眼で確認できるにも関わらず口内炎だと思い込んでしまうことで発見が遅れるケースがあるため注意が必要です。口の中に少しでも気になる症状がある時には、まずは近くの歯科に相談してみましょう。

口腔癌のセルフチェックの方法

口腔癌は、他の癌に比べると痛みが少ないという特徴があります。自覚症状がないことで手遅れになってしまうのを防ぐためには、月に1度のセルフチェックが大切です。定期的にセルフチェックを行うことで、口内炎やその他の潰瘍と区別しやすくなり、口腔癌の早期発見に役立ちます。

セルフチェックのポイント

  • 口腔癌には「舌癌」「歯肉癌」「口腔底癌」「頬粘膜癌」「口蓋癌」「口唇癌」などの種類があります。
  • セルフチェックを行う場合には、癌が発生しやすい舌・歯肉・頬や唇の内側を中心にチェックしていきます。

【鏡を使ったセルフチェック方法】

やり方

  1. 鏡を使い、出来るだけ明るい場所で確認します。
  2. 触って確認しましょう。見えにくいところや、色などは鏡で確認します。
  3. 入れ歯は外します。
  4. 色や状態がわからないときは、口腔癌の実例写真などを参照します。
口腔癌の種類 確認する場所 確認ポイント
舌癌 舌を前に出して、舌の側面、舌と歯肉の間
  • 特にできものがないか、治りにくい口内炎がないかをチェック
  • 食事でしみたり、痛みがないかをチェック
歯肉癌 唇の内側と下あごの歯肉の間
(歯肉癌は特に下あごの奥歯の近くに発生することが多い)
  • 口内炎や出血がないかをチェック
口腔底癌 下あごから首にかけて
(舌の下側で前方に発生することが多い)
  • 口内炎がないか、白斑や紅斑がないかをチェック
  • あごの下と首の脇に腫れがないかをチェック
頬粘膜癌 頬の内側の粘膜
(上下の臼歯の周辺粘膜、口角の後ろなどに発生することが多い)
  • しこりや盛り上がりはないか、痛みがないかをチェック
口蓋癌 上あごの歯肉と歯列
  • 白色病変や紅斑がないか、痛みがないかをチェック
口唇癌 唇の内側と下あごの歯肉
(唇と皮膚の境目の粘膜部分に発生することが多い)
  • ただれやかぶれはないかをチェック

以下のポイントもチェック

  • 飲食がスムーズにできるかをチェック
  • 短期間で病変の大きさや形に変化がないかをチェック

※ 一般社団法人口腔がん撲滅委員会より
※ チェック項目は、「公益社団法人日本口腔外科学会」「一般社団法人青森県歯科医師会」参照

このように、定期的にセルフチェックしていれば異変に気がつきやすく、口腔癌の早期発見へと繋がります。また、症状が該当しない場合には必要以上に心配することはありません。

ただし、以前はなかった症状が現れたり、病変が短期間で変化するような時には、早めに医療機関を受診することをおすすめします。また、セルフチェックで判断出来ない場合や不安がある時も医療機関で相談しましょう。

口腔癌の検査とは

見分けにくいがんだからこそ、検診でチェックしてもらうのがベストです。口腔外科や人間ドックの口腔健診で行われる検査について、一般的な流れを説明します。

口腔癌の検査の流れ

1.問診

口腔癌になる要素がどのくらいあるのかをチェックします。

  • 口腔癌の主な原因となる、普段の口内環境について(虫歯・歯周病の有無、歯並び、入れ歯や詰め物の状態など)
  • 口の中の異常のチェック(舌小帯付着異常、治りにくい口内炎など)
  • 生活習慣(喫煙・飲酒)、HPV(ウィルス)に関すること

など、複数の項目から確認します。

2.視診・触診・X線撮影

医師が直接口腔内を見て触って病変の有無を確認します。口腔癌の症状として現れる斑紋やただれなどの炎症、出血などを視診し、しこりや盛り上がりがないかを触診します。併せて口の中のX線撮影も行います。

3.結果説明

検査結果を元に医師が説明を行い、異常が発見された場合には治療へと移行します。特に問題がない場合には、引き続き自宅でのセルフチェックを続けましょう。

異常があった場合にどうなるのか

口腔癌の疑いがある場合、まずは癌の恐れがある口腔内の組織を採取して病理検査を行います。病理検査には、組織表面を綿棒でこすり顕微鏡で細胞診を行う方法か、細胞を切り取り生検でより詳しく検査する方法があります。

病理検査で悪性だと判明した場合、がんの大きさや深達度を把握するためにCTやMRIなどの画像検査を行います。また、口内で発生したがんが全身に広がっていないかを調べるためには、PET検査や骨シンチグラフィ検査を実施して転移の状況を調べます。

人間ドックを活用し年1回は口腔癌検診を受けよう

PET検査を活用して口腔癌検診を受けよう

口腔癌検診の重要性

検診を受けて異常がなかった場合でも、口腔内の状態は日々変化するため注意が必要です。口腔癌は、口内炎や歯が当たって出来た傷、潰瘍から癌化することもあれば、喫煙や飲酒などの生活習慣が引き金となって発生することもあります。今異常がなくても、口腔癌になりやすい要素や発生リスクがあれば、ちょっとしたことから癌へと変異する恐れはあるのです。

その際、かかりつけがあれば気になる症状は歯科で相談できますが、癌検査を行うとなると口腔外科など専門の医療機関へ再度出向かなければなりません。総合的な検査を効率よく受けたい場合は、歯科ドック(口腔ドック)や、人間ドックでの受診が便利です。すべての人間ドック受診施設でコースに含まれている訳ではありませんが、口腔健診を実施している施設や、オプションで追加できる施設があります。

年に1度の定期的な検診を心がけ、口腔癌リスクを早期発見できるようにしましょう。

まとめ|口腔癌は定期的な検診とセルフチェックで自己管理をしっかりと

口腔癌は、早い段階で異変に気がつくことができれば、体への影響も少なく済みます。セルフチェック以外にも人間ドックなどで検診を受けるなど、早期発見を意識することで口腔癌のリスクは低減します。

歯科ドックや口腔癌検診はまだあまり知られていない検診ですが、癌に気がつきにくい口の中だからこそ、定期的な検診でリスクに対処できるようにしていきましょう。

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