がん検診
前立腺がんの診断にPSA|血液検査の概要と二次検査について
この記事の監修
罹患者の増加にともない、近年では「前立腺がん」という言葉を耳にする機会も多くなりました。著名人が診断を受け、メディアで話題になったことも数多くあります。
「前立腺がん」の診断と治癒効果判定に貢献するのがPSA(前立腺特異抗原)検査です。この記事ではPSA検査の概要と、高値を示した場合の対処方法を解説いたします。
PSAとは?
PSAとは「前立腺特異抗原(prostate specific antigen)」の略で、前立腺から分泌されるたんぱく質酵素です。
正常なPSAの多くは前立腺実質内より精管に分泌されています。しかし、前立腺がんや前立腺肥大症などにより前立腺組織が壊れると、実質から逸脱し大量のPSAが血管の中に流出してしまいます(正常の場合でも一部血液中に存在)。
PSA検査の概要
血液中に流出しているPSAの値を測定する血液検査が「PSA検査」なのです。前立腺がんの可能性を調べるスクリーニング検査のひとつで、PSAの値が高ければ前立腺がんの確率も高くなります。PSA検査はスクリーニング検査のなかでも精度が高く、手軽な血液検査(腫瘍マーカー検査)で調べることができます。
PSAの値は一般的に健康な人であっても、年齢とともに高くなります。とくに、50歳を過ぎると前立腺がんの罹患率が急増するため、早期発見を目的に40歳からのPSA検査受診が推奨されています。
前立腺がんとは|2021年に男性のがん部位別罹患数第1位と予測
前立腺は男性の膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいます。その前立腺にできるがんが、「前立腺がん」です。発生には、おもに加齢による男性ホルモンバランスの変化が関与しています。
また、加齢だけでなく家族歴も危険因子のひとつです。前立腺がんの既往のある近親者がいる場合は、とくに注意が必要です。
出典:
国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」
全国がん罹患数・死亡数・有病数将来推計値(2015~2039年)
近年では前立腺がんの急速な増加が懸念されており、食事の欧米化や環境の影響もあると考えられています。国立がん研究センターによると、2021年は男性のがん部位別罹患数において前立腺がんがもっとも多くなるという予測が出ていますので、ますます注意が必要です。
前立腺がんは他の悪性腫瘍と同様に、初期には自覚症状がありません。進行した場合には以下の症状があらわれますが、前立腺肥大症や前立腺炎との鑑別が困難です。症状があれば専門医への受診をおすすめします。
- 尿がでにくい
- 残尿感
- 排尿時に痛みがある
- 血尿
- 夜間よくトイレに起きる
さらに進行すると、リンパ節や骨に転移が起こりやすく、下肢のむくみ(下腿リンパ浮腫)や骨痛があらわれることもあります。
PSAの値が高い場合
実際に検査を受け、PSAの値が高い場合の二次検査について解説します。
PSAの基準値:4.0ng/mL以上
一般的に基準値「4ng/mL」を超えた時は、多くの場合で以下いずれかの二次検査が行われます。
- ■前立腺超音波(エコー)検査
- 棒状の器具(プローブ)を肛門から挿入し、前立腺の大きさや形などを調べます。
- ■直腸内触診
- 医師が肛門から直腸へ指を挿入し、前立腺の状態を確認する検査です。
- ■前立腺CT検査
- 前立腺がんの周囲への湿潤の有無や肺転移、骨転移の有無を確認するための画像診断検査です。
- ■前立腺MRI検査
- 前立腺実質の性状やリンパ節転移の有無を確認するための質的画像診断検査です。
さらに、最終的な確定診断のためには「前立腺生検」が行われます。前立腺の画像を見ながら、前立腺に針を刺して十数か所の組織を採取します。採取した組織標本や細胞を顕微鏡で観察し、細胞模型や構造異型を判断材料にがんかどうかを判定する精密検査です。
ただし、PSA値は一時的に高くなる場合や、がんではなく前立腺炎や前立腺肥大症の時にも高くなる場合があります。二次検査が必要かどうかは泌尿器科専門医に相談しましょう。
検診の一環としてメンズドックを活用
PSA検査は、がん検診や人間ドック、かかりつけの医療機関でも受診することができます。とくに前立腺がんは自覚症状がなく、症状が現れたときにはすでにリンパ節や骨に転移してしまっている可能性が高いと言われています。そのため、自覚症状のない段階での早期発見がもっとも重要です。
自覚症状がない段階で、検診の一環として受ける場合はメンズドックがおすすめです。メンズドックでは、通常の人間ドックでは見つからない男性特有の疾患リスクを調べることができます。
- 前立腺がん以外の疾患リスクも調べることができる
- PSA検査だけでなく、前立腺超音波(エコー)検査や前立腺MRIなどを組み合わせて受診できる
- 転移の発見につながる
まとめ:40歳になったら毎年PSA検査で前立腺をチェック
厚生労働省のがん統計によると、前立腺がんは大腸がんに次いで罹患者数が多く、近年はとくに増加しています。2020年には男性の部位別がん罹患数でトップになると予測されていますので十分に注意が必要です。しかし、前立腺がんは他のがんに比べ治癒効果が高く、早期発見と適切な治療で治る可能性が高いがんと考えられています。
40歳になったらPSA検査を一度受けてみましょう。PSA検査だけではなく、より詳細な項目をまとめて検査してもらえるメンズドックの活用もおすすめです。