胃がん検診の受診推奨年齢は?受診頻度から費用までを解説

がん検診

胃がん検診の受診推奨年齢は?受診頻度から費用までを解説

栄エンゼルクリニック 水野芳樹 医師

この記事の監修ドクター

栄エンゼルクリニック 院長
水野芳樹

【略歴】
1985年 名古屋市立大学医学部 卒業
2010年 医療法人士正会 理事就任

【資格】
日本消化器病学会認定 消化器病専門医

胃がんは日本人のがん部位別死亡者数が上位の疾患です。早期発見することで治癒の確率が高まるため、早めに検診を受診することが重要とされています。しかし胃がん検診は受診できる年齢に制限があります。
この記事では、胃がん検診の受診推奨年齢や受診の頻度、検査にかかる費用などを解説します。

目次
  1. 胃がん検診を受診したほうがよい年齢は?
  2. 胃がん検診の必要性と推奨される受診頻度
  3. 胃がん検診の検査内容と目的、費用感
  4. 受診年齢で費用は変わる?
  5. まとめ:胃がん検診の受診は年齢に合わせた検査方法とタイミングが重要

胃がん検診を受診したほうがよい年齢は?

どんな人が胃がんになりやすい?

胃がんの原因|どんな人が胃がんになりやすいのか

胃がんの主な原因は、塩分の多い食事や喫煙、多量の飲酒、ヘリコバクターピロリ菌の感染だといわれています。ヘリコバクターピロリ菌とは、胃の粘膜で炎症を起こす病原性の細菌です。この細菌は一度感染すると、除菌しない限りは胃の中に棲み続けます。
慢性的な感染による炎症(ヘリコバクターピロリ菌感染胃炎)が続き、そこへ塩分の多い食事やストレスといった環境因子、または粘膜の防御機能が低下するなどの要因が加わることで、胃がん・胃潰瘍・十二指腸潰瘍といった疾患を発症するリスクが高くなると考えられています。

胃がん検診を受けたほうがよい年齢

国立がん研究センターの統計によると胃がんは、がんの部位別死亡数で第3位、罹患数では第2位と上位に入るがん疾患です。男性では40歳以上になると、胃・大腸・肝臓など消化器系のがんによる死亡割合が高くなります。※1

※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」

受診の年齢制限について

基本的に胃がん検診は50歳以上の男女が受診対象、胃部X線検査のみ対象が40歳以上と、胃がんの罹患率が高まる年代での検査が推奨されています。40歳以下の方も希望者は、自治体での胃がん検診(胃部X線検査)の受診はできますし、全額自己負担にはなりますが、任意の医療機関でも胃がん検診の受診は可能です。

ただし検査によるデメリットもありますので、検査の特徴を把握して受診すべきかどうかを検討した方が良いでしょう。

胃がん検診の必要性と推奨される受診頻度

胃がん検診の受診頻度

各自治体で受診できる胃がん検診は、胃内視鏡の場合で2年に1回、胃X線検査であれば年1回の受診が推奨されています。
平成30年度に国のがん検診の指針改正があり、胃部X線検査の受診は当分の間「40歳以上の方を対象に、年1回の実施可」とされています。また、任意型検診であれば年齢を問わず受診できます。

胃がん検診のメリット・デメリット

胃がん検診は、受診することで初期がんの早期発見につながるというメリットがありますが、その反面、検診を受診することで被るデメリットもあります。メリット・デメリットを理解して、受診すべきかどうかを選ぶようにしましょう。

【メリット】

総合的なメリット
  • 初期がんや病変リスクの早期発見につながる。
  • 検診を受けて異常がなければ、次の検診までは安心して生活することができる。
胃内視鏡検査の場合
  • 直接胃内部を観察できるので早期がんを発見しやすい。
  • 病変が発見された場合、直ちに組織を採取して調べることができる。
胃部X線検査
  • 胃の粘膜表面だけでなく粘膜下の病変も調べることができる。
  • 検査技師が対応できるため、1日の検査可能枠も多く待ち時間が少なく、検査できる場所も多い。

【デメリット】

総合的なデメリット
  • がん検診を受けても病変を発見できない恐れはある。
  • 検査のために体調を崩す恐れがある。(検査時の偶発性、バリウムの不排出など)
  • 検査結果が判明するまでの心理的不安。(ストレス・心理的負担)
胃内視鏡検査の場合
  • 内視鏡の挿入や組織採取による粘膜の損傷(出血や穿孔)などの偶発症やアレルギー反応。
    咽頭反射や咽頭不快感強い場合は心理的後遺症を残すことあり
  • 内視鏡でも病変を発見できないケースはある。
胃部X線検査
  • 直接胃内部を観察していないため病変を見落とすケースはある(早期がんの発見頻度は内視鏡検査より低い)。
  • X線検査のため放射線による被ばくがある。
  • 胃検査結果に間違い(偽陽性)があった場合、本来不要な精密検査が必要となる。(過剰診断)
  • 検査後にバリウムで便秘になるケースがある。(排出されない場合は治療が必要となる)
  • 高齢者や腸疾患のある人はバリウムが飲めないため検査ができない。

胃がん検診の検査内容と目的、費用感

問診イメージ

一次検診の各検査(問診、胃部X線検査、胃内視鏡)概要

胃がん検診には、一次検診と二次検診(精密検査)があります。一次検診で「異常あり」と診断されると、さらなる精密検査としての二次検診の受診が必要となります。

一次検診として国が推奨しているのは「問診」「胃内視鏡検査(胃カメラ)」「胃部X線検査(バリウム)」の3つです。
胃がんリスクを高める物質・ペプシノゲンの血液濃度を測る「ペプシノゲン検査」や、同じく胃の粘膜を炎症させ胃がんリスクを増加させるヘリコバクターピロリ菌の有無を調べる「ヘリコバクターピロリ抗体検査」もありますが、どちらも胃がんの発症リスクを間接的に調べる検査方法なので、一次検診に追加して行うことも推奨されます。

【一次検診で実施する検査方法】

<問診>

概要医師が受診者に口頭で質問し、その内容について受診者が回答して診断。目的自覚症状の確認、家族歴の有無、過去の検診受診歴から、異常や気になる所見がないかを診断するために実施。

費用

初めて受診する病院では初診料がかかります(紹介状の有無に金額は変動)。治療を行えばさらに診察料がかかります。また3割負担か1割負担かによっても異なります。

<胃部X線検査(バリウム)>

概要 胃部造影剤(バリウム)を飲んだ後、検査台で体の向きを変えながら上部消化管内を流れる胃部造影剤(バリウム)をX線で撮影し、胃の形や粘膜上に異常がないかを画像によって診断。
目的 胃・食道・十二指腸のがん疾患のほか、胃潰瘍や胃炎などの発見が目的。

費用

5,000~7,000円程度
※医療機関によって変動あり
※40歳以上の方は自治体のがん検診にて無料もしくは少額で受診可能(自治体によって金額は異なる)

<胃内視鏡検査>

概要 胃内視鏡(胃カメラ)で食道から胃、十二指腸までの上部消化管内部を目視で確認し病変の有無を診断。
上皮内癌など微細な病変まで診断可能。
目的 胃がんや食道、十二指腸の各疾患の早期発見につなげるのが目的。病変が発見された場合は、検査時に組織採取し、確定診断がも可能。

費用

6,000~20,000円程度
※医療機関によって変動あり
※ 50歳以上の方は自治体のがん検診にて無料もしくは少額で受診可能(自治体によって金額は異なる)

検査にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、年齢や自覚症状に合わせて検査方法を選ぶようにしましょう。

二次検診の各検査概要

万が一、胃がんの一次検診で「精密検査」との診断が出た場合には、二次検診へと移行します。通常は、胃腸専門の医師が在籍している医療機関を受診しますが、地方自治体が二次検診を行う医療機関を指定しているケースもあります。
精密検査として行う二次検診では、胃部X線検査を受けた場合には胃内視鏡検査を実施するケースが多く、胃内視鏡検査の場合は、より精度の高い胃内視鏡検査か、進行度の調べるCTなどの検査を受ける。

<胃部X線検査(バリウム)>

概要 一次検診では、撮影技師が6~10枚程度画像を撮影し、医師が画像とフィルムを読影して診断することが一般的。二次検診では、医師がX線テレビを見ながら診断し、その後フィルムを読影するスタイルとなることが多い。
目的 一次検診で発見された病変を、より詳細な画像撮影によって診断。

費用

5,000~7,000円程度+初診料・再診料他
※医療機関によって変動あり。
※精密検査を外部医療機関で受診する場合は、保険診療扱い。

<胃内視鏡検査>

概要 一次検診の診断を元に、胃内視鏡(胃カメラ)で食道から胃、十二指腸までの上部消化管内部を目視で確認し病変を診断。
目的 二次検診として、胃がんを早期発見するのが目的。病変が発見された場合はさらに組織採取を行い、良性・悪性の判定を行う。

費用

6,000~20,000円程度+初診料・再診料他
※医療機関によって変動あり。
※精密検査を外部医療機関で受診する場合は保険診療扱い。

一次検診で胃内視鏡検査を実施している場合、採取した病変が「悪性」との判断であれば、胃がんの進行度(ステージ)、深達度、転移の有無を確認する検査へと移行します。検査方法としては、がんの深達度を調べるための超音波検査、移転の有無にはCT検査、大腸近くにがんが広がっていないかを確認するための注腸検査などがあり、病変の範囲や進行度合いを見ながら治療していきます。

なぜ胃部X線検査は40歳以上で実施するのか

胃がん検診で実施する胃部X線検査は、画像撮影を行っている間の2~3分間、放射線を浴び続けることになります。その実効線量は約1~2mSv(ミリシーベルト)と、胸部X検査やマンモグラフィといった他の放射線を用いた検査よりも高い値です。人体に影響がない範囲としても無害とは言い切れないため、胃がんリスクの低い40歳以下では検診の対象外となっています。

ただし、がんの中でも治療が困難であるスキルス胃がんは、20代~30代の若い世代でも発症する恐れは十分にあります。気になる症状がある、健康管理に役立てたい、という場合は希望に応じて胃がん検診を受診することも可能です。
「ペプシノゲン検査」や「ヘリコバクターピロリ抗体検査」で、胃がんリスクを確認する方法もあるので、検査のデメリットも理解した上で検診に臨みましょう。

受診年齢で費用は変わる?

胃がん検診は自治体で実施している検診を受診する場合、年齢に制限はありますが、無料もしくは安い金額で検査を受けることができます。
受診ができるのは基本的に50歳以上、胃部X線検査に限り当面は40歳以上が対象です。40歳以下の方で胃がん検診を受けたい場合は、自治体への個別連絡で胃部X線検査のみ受診することができますが、自費診療となるケースもあるので注意してください。

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まとめ:胃がん検診の受診は年齢に合わせた検査方法とタイミングが重要

胃がんリスクを早期発見することは重要ですが、検査を受ける年齢と検査方法によっては、逆に健康を害する恐れがあるなどのデメリットもあります。受診する前には検査内容や、その検査が体に及ぼすメリット・デメリットをよく理解して検討するようにしましょう。年齢に見合った検査で胃がんリスクを回避し、健康維持に努めてください。

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