がん検診

胃がん検診|内視鏡検査のメリット・デメリット(バリウム検査との違い)

三井タワークリニック 斎藤達也先生

この記事の監修ドクター

三井タワークリニック 院長
斎藤 達也

1979年 国立旭川医科大学 卒業
1983年 国立旭川医科大学院 修了
1983年 国立旭川医科大学内科学第2講座助手
1983年 私立昭和大学附属豊洲病院消化器科助手
1986年 中央みなとクリニック 開設

厚生労働省の指針改定があり、2016年より胃がん検診はバリウム検査だけではなく、内視鏡検査も選択できるようになりました。直接胃の中を確認することができる内視鏡検査の有効性が確認されたことによる判断ですが、内視鏡検査には、バリウム検査同様、メリット・デメリットがあります。

この記事では、内視鏡検査とバリウム検査の違いについて説明しています。

目次
  1. 内視鏡検査とバリウム検査の違い
  2. メリット・デメリット比較|内視鏡検査とバリウム検査、どちらを選ぶべき?
  3. 内視鏡検査の流れと費用
  4. まとめ:初期の胃がん発見には内視鏡検査が有効

内視鏡検査とバリウム検査の違い

内視鏡検査とバリウム検査の違い

胃がん検診の目的は胃がん・食道がん・十二指腸潰瘍などの消化器官リスクを調べることです。胃がん検診項目としての内視鏡検査とバリウム検査について、それぞれの特徴を解説します。

内視鏡検査は胃の粘膜を直接見ることができ、小さな病変も見つけられる

内視鏡検査は、先端にカメラ(内視鏡)が付いた細く柔らかい管(チューブ)を使用し、カメラのモニターを見ながら食道・胃・十二指腸の内部を直接観察する検査です。内視鏡には口から、または鼻から挿入するものがあり、それぞれ「経口内視鏡」「経鼻内視鏡」といいます。

内視鏡検査の一番の特徴は胃の粘膜を直接見ることです。小さな病変が発見でき、同時に組織の一部を採取することもできるため、診断の確定に役立ちます。そのため、バリウム検査で異常があった場合は二次検査(精密検査)として内視鏡検査が行われます。

この、胃内視鏡検査は「複数の観察研究において死亡率減少効果を示す相応な証拠がある」と確認され、実施が推奨されています(国立がん研究センター『有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン』2014年度版)。

バリウム検査は胃の全体像や動きを見る

バリウム検査とは、造影剤(バリウム)とX線(レントゲン)を使用して食道・胃・十二指腸の内部を観察する検査です。検査台の上で体の向きを変えながらX線を連続的に照射し、リアルタイムにバリウムの流れや食道・胃の動きを観察することができます。胃全体の形や病変の大きさ(大きくなった進行がん)・位置関係を把握し、リスクをスクリーニング(ふるいわけ)することがが主な検査目的です。

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メリット・デメリット比較|内視鏡検査とバリウム検査、どちらを選ぶべき?

内視鏡検査とバリウム検査を選ぶ際のポイントとなる、メリットとデメリットを解説します。

メリット

内視鏡検査 バリウム検査
  • 小さな病変の発見に役立つ
  • 胃の粘膜を直接見る=病変そのものを確認
  • 診断の確定ができる(良性悪性の判断)
  • 被ばくの影響はない
  • 食道がんの発見にはバリウムより向いている
  • ピロリ菌感染の発見
  • 経鼻の場合、医師と会話ができる
  • 検査後に下剤を飲む負担はない
  • 胃全体像が把握できる
  • 大きくなった進行がんの発見
  • 粘膜へのバリウム付着具合を確認
  • 動きをリアルタイムに見る
  • スキルス性胃がんの発見には内視鏡検査より向いている
  • 内視鏡検査と比べ費用が安い

デメリット

内視鏡検査 バリウム検査
  • 胃全体像の把握は不向き
  • 経口の場合、管が舌の根元に触れることで、咽頭反射(嘔吐感)が起こりやすい
  • 経口と経鼻で管の太さが異なる点でもどちらかを選ぶ必要がある
  • 麻酔が必要なため、検査時間が長い
  • 麻酔使用時は、移動手段に制限がある(運転は不可)
  • 経鼻の場合、鼻粘膜が傷つく恐れがある(鼻血など)
  • バリウム検査に比べ費用が高い
  • 麻酔薬によるアレルギー反応
  • 胃や食道の出血や穴をあけてしまう「穿孔(せんこう)」が起きるリスク
  • X線による被ばくがある
  • 小さな病変の発見は不向き
  • 影絵で判断する診断のため、平らながんの発見は不向き(検査制度に限界がある)
  • 早期の食道がんの発見は不向き
  • 前日から当日までの制限が内視鏡より多い
  • 異常が見つかった際には内視鏡検査(精密検査)をする必要がある=二度手間になる
  • バリウムの味がまずい
  • 発泡剤を飲み、ゲップを我慢する苦しさがある
  • 検査後、下剤を飲む必要がある
  • バリウムによる便秘を招く
  • 初期の胃がんは凸凹が見えにくく、検出しづらい
  • 自力で体位変換ができない人や、妊娠中・妊娠の可能性のある人などは対象外

内視鏡検査の流れと費用

内視鏡検査は検査前日から当日にかけて、食事や移動手段の制限があります。注意事項を守ったうえで当日検査に臨まなければ検査が延期になることや、正確な検査ができない恐れもあるでしょう。

また費用面は、一般的にバリウム検査は10,000円程度ですが、内視鏡検査は15,000円から20,000円程度とやや高くかかります。

内視鏡検査とバリウム検査、それぞれの特徴と検査の流れ、費用についても確認し、納得のうえで検査方法を選択しましょう。

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まとめ:初期の胃がん発見には内視鏡検査が有効

胃がん発見には定期的な検診が大切

初期の胃がんは自覚症状がほとんどなく、バリウム検診を通して進行した胃がんが見つかることも少なくありません。日本では罹患数が最も多いがんであり、誰でも罹患する可能性がある胃がんのリスク発見には、内視鏡検査はとても有効です。

定期的な検診が大切だからこそ、抵抗や負担が少ないと感じる検査を選ぶことも一つの選び方です。メリット・デメリットを認識し、内視鏡検査も視野に入れて検討することをおすすめします。

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