がん検診

胃がん検診時に要確認|バリウム検査に臨む前に心得ておきたいこと

いすゞ病院 芦原 毅先生

この記事の監修ドクター

いすゞ病院 院長
芦原 毅

【略歴】
1983年 北里大学医学部医学科卒業
1992年 北里大学大学院医学研究科博士課程修了

胃がん検診といえば「バリウム」というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか? 実際、企業検診や自治体の検診でもバリウムによる胃がん検査(胃バリウム。上部消化管X線造影検査)が広く実施されてきました。

胃がんは日本人に多いがんの一つで、大腸がんに次いで2番目に高い罹患率となっています。広く認知されている疾患だからこそ、胃がん検診の重要性は理解していても、選択した検査が最適な方法なのかを認識している方は多くないでしょう。

この記事では、バリウム検査受診時の注意事項を中心に、胃がん検診方法の種類と選び方を詳しく解説します。

目次
  1. バリウム検査受診前日から検査後までの留意事項
  2. バリウム検査対象外または苦手意識があれば「内視鏡検査」を視野に入れよう
  3. まとめ|胃バリウムと胃カメラを選択するためには状況把握が必須

バリウム検査受診前日から検査後までの留意事項

バリウム検査受診前日から検査後までの留意事項
正しい受診結果を得るために、バリウム検査を受診する上で、いくつか注意しておきたい事項があります。注意を守れなかった場合、検査が延期となるケースもあります。

検査前日から当日までに気を付けたい5つのこと

  検査前日 検査当日
食事 食事は21時までに済ませる(油っぽい食事や甘いものも消化に時間がかかるため、避ける) 検査終了まで絶食(飴やガムも含)
喫煙 喫煙可能だが禁煙を推奨 喫煙は控える
水分 お茶・水のみ摂取(牛乳やコーヒーなどは21時までに済ませる、アルコールは絶飲) 開始3時間前まで1杯程度の水のみ摂取(検査後のお酒はバリウム排出に影響がでるため控える)
いつもどおり内服薬摂取 内服薬は検査開始2時間以上前に済ませる(ただし、糖尿病の方などはかかりつけ医と検査医師に相談が必要)
過ごし方 激しい運動を控え、十分な睡眠時間を確保 ゆっくりと過ごす

検査後は24時間以内に排便を

消化管内に長時間バリウムが残っていると、便が硬くなって排出しにくくなり、腸閉塞や消化管穿孔など重篤な合併症を招く危険性があります。
バリウム検査後は下剤を服用し、少しでも早くバリウムを排出させます。消化管内に長時間バリウムが残っていると、便が硬くなって排出しにくくなり、腸閉塞や消化管穿孔など重篤な合併症を招く危険性があります。特に普段から便秘がちの方や、高齢で消化管の機能が弱っている方は注意が必要です。

処方された下剤を指示どおりに服用し、便が出るまで水分を多めに飲みましょう(1日2リットル目安)。便意を感じなくても、定期的にトイレへ行くようこころがけてください。検査から数日は排便状況を確認し、バリウムが排出されない、腹痛などの不安な症状が現れた場合には、すみやかに医療機関を受診しましょう。

バリウム検査対象外または苦手意識があれば「内視鏡検査」を視野に入れよう

バリウム検査には検診前後に注意すべきことや制限があり、発泡剤やバリウムを飲むなどの身体的な負担もあることから、苦手意識を感じる人は少なくありません。

また、バリウム検査には安全基準が設けられており、以下に当てはまる場合は検査対象外とされています。その一例を紹介します。

バリウム検査が適さないと判断される方

  • 妊娠中および妊娠していると思われる方
  • 体力がない方(自分の力で立つことが出来ない、体位変換が困難、誤嚥しやすいなど)
  • 視力や聴力障害の方
  • 検査機器の都合上、体重120kgを超えている方
  • 胃切除の手術を受けた方
  • 便秘症の方(特に、過去のバリウム検査後に便秘で医療機関を受診した方)

胃がん検診には内視鏡検査の選択肢もある

バリウムに苦手意識を感じる方、バリウム検査の対象にはならない方には、胃がん検診を諦めず、いわゆる「胃カメラ」(上部消化管内視鏡検査)を選ぶことも一つの方法です。口または鼻から内視鏡を体内に挿入し、内部を直接観察・撮影する検査となります。

胃がん検診では、胃・食道・十二指腸をチェックし、胃がん・胃潰瘍・食道がん・逆流性食道炎・十二指腸潰瘍などのリスクを調べます。「胃バリウム」と「胃カメラ」では、この主目的は同じですが検査方法や特徴に違いがあります。

  上部消化管X線造影検査
(胃バリウム)
上部消化管内視鏡検査
(胃カメラ)
検査内容 造影剤(バリウム)と胃を膨らませる発泡剤を飲んだ状態で、X線を照射し、内部を観察 口または鼻から先端に小さな医療用カメラ(内視鏡)のついた管を体内に挿入し、内部を直接観察・撮影
目的 胃・食道・十二指腸における、がん、炎症、ポリープ、潰瘍などの病変の発見
特徴 *造影剤の流れでリアルタイムな食道や胃の動き、食物の通る様子や粘膜表面の造影剤の流れにて観察(モノクロ)
*胃全体像を把握しやすい
*スキルス性胃がんの発見
*粘膜を観察(カラー)
*検査と同時に病変のサンプル採取も可能(内服中の薬によっては不可能)
*胃バリウム検査後時の精密検査で実施
小さな病変・ピロリ菌感染の発見
負担 *X線による放射線被ばく(人体影響はなし)
*検査中の体位回転変換
*バリウムと発泡剤を飲む
(発泡剤で生じるゲップを抑える必要がある)
*嘔吐反射
*鎮静剤使用の場合後は当日運転不可
*バリウムに比べ費用が高い
*経鼻内視鏡の場合、鼻粘膜が傷つく恐れあり

まとめ|胃バリウムと胃カメラを選択するためには状況把握が必須

バリウム検査も内視鏡検査どちらも実施している医療機関であれば、胃がん検診を受ける際に医師に相談を

検査に対するリスクや不安の感じ方や、体質は人によってさまざまです。バリウムによる胃がん検診を理解し、自身の状況を把握した上で、自分にとって最適な検査方法を選択しましょう。

バリウム検査も内視鏡検査どちらも実施している医療機関であれば、胃がん検診を受ける際に医師に相談をしてみてください。

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