がん検診

肺がん検診|リスクの早期発見に胸部CTを活用

企業健診や住民健診では、肺がん検診として「胸部X線検査(レントゲン検査)」が実施されていますが、小さながんの早期発見は難しいのが現状です。
この小さながんの早期発見に焦点を当てたものが「胸部CT検査」で、初期の肺がんの疑いを発見することに役立てられています。

厚生労働省による『喫煙の健康影響に関する検討会(2016年)』の中では、「たばこの煙がヒトに対して発がん性がある」とされ、喫煙者は非喫煙者に比べ、肺がんリスクが高いことが分かっています。たばこの煙は、喫煙者自身の他、近くで煙を吸い込んでしまう(受動喫煙)人にも影響します。

今回は、肺がんの原因、「胸部CT検査」と「胸部X線検査(レントゲン検査)」の違いについて紹介します。

目次
  1. 肺がんの原因はたばこだけではない
  2. 肺がん検診の種類|胸部CT検査と胸部X線検査の違い
  3. 胸部CT検査で異常が見られた場合
  4. 胸部CT検査を受ける頻度
  5. 肺がん検診にかかる費用
  6. まとめ:小さな病変の発見、健康管理に胸部CT検査を役立てましょう

肺がんの原因はたばこだけではない

非喫煙者の女性でも配偶者が喫煙者の場合に肺腺がんが発生する確率が高まることがわかっています

喫煙が肺がんリスクを高めることは広く知られていますが、最近はたばこを吸わない人にもみられる肺がん「肺腺がん」の発症が増加傾向にあります。ここで喫煙以外の肺がん原因と予防方法について、正しく認識しておきましょう。

非喫煙者でも油断できない「肺腺がん」

肺がんのなかで最も多いといわれる「肺腺がん」の発症は「女性ホルモン」と「大気汚染」の2つが大きく関与しているといわれています。また、自分の意思に関わらずたばこの副流煙(たばこそのものから出る煙)を吸い込んでしまう「受動喫煙」の影響も強く、非喫煙者の女性でも配偶者が喫煙者の場合に肺腺がんが発生する確率が高まることがわかっています。

肺がんの予防方法

最も喫煙の影響を受ける肺がんは、たばこを吸わないことが一番の予防策です。たばこ以外の肺がん原因となる大気汚染に対しては、生活の中で可能な限り空気中の有害物質を吸い込まないよう努めることで予防につながります。

しかし大気汚染もそうですが、女性ホルモンや受動喫煙なども、肺がんの危険因子を認識していたとしても全てを防げるわけではありません。喫煙者だけではなくたばこを吸わない人にも忍び寄る肺がんの早期発見・予防のためには、肺がん検診を活用し、現状のリスクを把握することが何よりも重要です。

肺がん検診の種類|胸部CT検査と胸部X線検査の違い

胸部CT検査とは、X線を照射し、胸部の断層写真を撮る(コンピュータ断層撮影)検査です。肺がん、胸部大動脈瘤(きょうぶだいどうみゃくりゅう)、肺炎などの小さな病変の早期発見に役立ち、1センチ以下の肺がん発見に有用です。また、胸部X線検査で見つかった「肺の影」について調べるためにも役立てられています。

胸部X線検査と比較すると、胸部CT検査のほうが被ばく量が多く、受診者の不安要素になりかねないという懸念はあります。しかし、一般的に1回の検査による放射線の影響は小さく、受診することで得られるがんの早期発見メリットの方が大きいといわれています。

一方、健診などで広く使われている胸部X線検査は、胸部の臓器の形や病変をレントゲン撮影にて確認する検査です。短い時間で検査ができるというメリットはありますが、立体である肺全体が1枚の平面写真として写し出されるため、臓器の重なり合った部分が見えにくいというデメリットもあります。具体的な例を挙げると、乳頭を腫瘤と読影されてしまうこともあります。

胸部CT検査で異常が見られた場合

胸部CT検査で、異常や肺がん・肺結核などの重大な病気の疑いが判明した場合は、気管支鏡検査、PET-CT検査などによる精密な検査、場合によっては手術をする必要があります。

また、異常かどうかの判断が難しい場合も少なくありません。その場合は一定期間を置いた後、再度、胸部CT検査を行い、病気の有無や病変の大小を前回受診時の結果と比較する「経過観察」という方法を選択することもあります。

ちなみに、異常が見つかってからの費用は保険診療となり、各検査の保険適用後の金額となります。

胸部CT検査を受ける頻度

肺がんは50歳代で急激に罹患率が上昇することが分かっているため(※1)50歳以上の年齢層を対象に4分類し、胸部CT検査を受ける間隔を以下のとおりに推奨しています。なお、40歳代は肺がんの罹患率が低く、発見が期待できないので、検診としての胸部CT検査は推奨されていません。
※1 厚生労働省「全国がん罹患数2016」

【年代別】胸部CT検査の受診推奨頻度

年代 受診推奨頻度
50歳以上75歳未満で喫煙指数600以上の喫煙者
(過去に同等の喫煙歴がある人も含む)
1年に1回
50歳以上 連続して2年に1回ずつ検査を行い、それ以降は3~5年に1回
40歳以上50歳未満の男女 5年に1回程度
75歳以上の男女 任意・希望者のみ

▼喫煙指数(ブリンクマン指数)について詳しく知りたい場合はこちら
肺がん検査|死亡数の多い肺がんリスクを調べる検査項目・費用・流れとは

ただし、人間ドックの受診は自由意志での受診のため、受診者に検診間隔の制限はありません。肺がんのリスクについて自身の年齢とともに考えて把握した上で、受診するタイミングや受診頻度を検討しましょう。

肺がん検診にかかる費用

自覚症状がなく、健康管理を目的に人間ドックなどの自由診療で肺がん検診を受診する場合は、全額自己負担となります。

胸部CT検査

■受診費用 10,000~30,000円程度
■検査時間 10~20分程度

胸部エックス線(レントゲン)

■受診費用 3,000~10,000円程度
■検査時間 数分~10分程度

喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)

吐いた痰を採取し、それを染色して顕微鏡で観察する検査。

■受診費用 3,000~5,000円程度

まとめ:小さな病変の発見、健康管理に胸部CT検査を役立てましょう

初期の肺がんであれば治癒する可能性が高いことから、小さな病変の発見に役立つ胸部CT検査の活用を

日本人のがん患者の中でも、大腸がん・胃がんに次いで肺がんは罹患数が多くなっており、死亡数は全てのがんの中でも一番です。

肺がんの最大の原因は喫煙です。近年はたばこを吸わない人の肺がんが増加傾向にあることに伴い、全ての人が発症する恐れのある疾患として危惧されています。

肺がんの初期症状は風邪に似た症状が現れる程度で、特有の自覚症状が現れた時にはすでに肺がんが転移している場合も多いほど、進行が早い疾患です。初期の肺がんであれば治癒する可能性が高いことから、小さな病変の発見に役立つ胸部CT検査を活用し、自身の健康管理に役立てていきましょう。

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