脳ドック
脳梗塞リスク評価について|採血のみでかくれ脳梗塞の発見する血液検査
この記事の監修ドクター
【経歴】
1992年 京都大学医学科医学部 卒業
1992年 神戸市立中央市民病院 研修医
1994年 京都大学医学部 大学院
1999年 大阪赤十字病院
2007年 大阪府済生会中津病院
2015年 大阪府済生会中津病院 総合健診センター部長 就任
【資格】
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医
日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
脳卒中(脳血管疾患)にはさまざまな種類がありますが、最も死亡数が多いのは脳梗塞です。そんな脳梗塞のリスクを血液検査という手法で判断する「脳梗塞リスク評価」が注目を集めています。おおがかりな画像診断と違い、受診者の負担は注射による採血のみです。
ここでは、脳梗塞のリスクの踏まえ、脳梗塞リスク評価についてご紹介します。
- 目次
脳梗塞で年間6万人が死亡、早期発見が重要
脳梗塞は、脳の血管がつまることによって発症します。厚生労働省の『人口動態統計2016』によると、脳卒中全体の年間死亡数は10万9千人。そのうち脳梗塞は6万2千人と6割近くを占めています。これは、脳出血(3万1千人)やくも膜下出血(1万2千人)の死亡数を大きく上回っています。
厚生労働省が2018年3月に発表した『国民生活基礎調査』によると、介護保険法で認定された「要介護(重度の場合が『寝たきり』)」の主な原因は、男性では「脳卒中」がトップです(女性は認知症がトップ)。脳卒中は、寝たきりの原因としても多いのです。
脳卒中のうち最も多く発症する脳梗塞のリスクを早期発見することは、受診者はもちろん社会にとっても意義があるのです。
脳梗塞リスク評価は初期症状「かくれ脳梗塞」の発見が目的
「脳梗塞リスク評価」は、脳梗塞の初期症状の「かくれ脳梗塞(無症候性脳梗塞)」を発見することが目的です。かくれ脳梗塞は、その名のとおり自覚症状がほとんどないままに進行します。
本来、頭部MRI検査や頭部CT検査など、脳ドックで提供されている画像診断などを受診しなければ早期発見は難しいとされていますが、画像診断は検査時間と費用の面で受診者の負担も大きいのです。そこに、血液検査を用いた「脳梗塞リスク評価」の意義があります。
検査の負担が少ないことは受診しやすいということ。かくれ脳梗塞といった脳梗塞リスクを早期発見できる人が増え、生命に危険が及ぶ人を減らすことにつながるのです。
2012年から利用開始、年間1万8千人が利用
「脳梗塞リスク評価」は、千葉大学発のベンチャー企業「アミンファーマ研究所」が開発し、2012年から医療機関や人間ドックなどでの利用がスタートしています。千葉県のタウン紙で紹介されたこともあります。
また、神奈川県が主管するブランド事業「ME-BYO(みびょう)BRAND」に認定されており、2018年現在、千葉・東京・神奈川の計200施設以上で年間およそ1万8千人に利用されています。
実際の受診では他の血液検査と同様、受診者から注射器で少量の血液(5mLほど)を採取し、その後、アミンファーマ研究所で分析するという流れです。
検査結果は「脳梗塞リスク値」という0~1の数値で評価されます。1に近づくほどリスクが高まります。評価結果は3種類に分けて示されます。ハイリスク(高値)は0.80~1.0、境界値は0.44~0.79、ローリスク(低値)は0.0~0.43です。
ローリスク | 境界値 | ハイリスク |
---|---|---|
0.0~0.43 | 0.44~0.79 | 0.80~1.0 |
検査結果が「高値」だった場合、脳ドック(頭部MRI検査)など精密検査の受診が推奨されます。その際、あらかじめ、かくれ脳梗塞が評価されていることが、精密検査の診断をする際に重要な情報となります。
脳梗塞リスク評価の概要はこちら。
受診費用 | 7,000~10,000円 |
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検査時間 | 採血のみの一瞬 |
検査結果 | アミンファーマ研究所での分析を経て数週後に郵送される場合がほとんど |
まとめ:脳梗塞リスクの判断に有用な血液検査で気軽にチェック
脳梗塞に罹患した人、脳の検査が必須といわれる60代の人であっても、健康に問題がなければ脳(頭部)の検査の受診にまでふみきれないケースも多いです。
「脳梗塞リスク評価」は、血液検査のみの負担でかくれ脳梗塞を発見し、脳梗塞を発症する前にリスクの発見を目指します。
受診者の身体的・精神的・費用面での負担が少ない検査なので、気軽に脳梗塞リスクをチェックする機会を拡大する意味があるのです。
たとえば、近親者に脳梗塞になった人がいるなら20代・30代のうちから受診してもよいでしょう。60代の親を持つ人ならいっしょに受診してみるのもひとつの方法です。できるだけ早い時期にリスクを発見することが、脳梗塞の予防につながります。